病害虫のカテゴリカル順序データから発生動態を解明する手法

タイトル 病害虫のカテゴリカル順序データから発生動態を解明する手法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究課題名
研究期間 2015~2018
研究担当者 山中武彦
長田穣
加賀谷悦子
山北剛久
Andrew M. Liebhold
発行年度 2018
要約 多状態占有モデルを使って東北地域で分布拡大過程が記録されているマツ枯れ病と媒介虫の長期広域記録を解析し、マツ枯れ病蔓延の主要因と発生動態を解明する。多状態占有モデルとは、カテゴリカルな病害虫発生記録を用いて生物の動態解析が可能な手法である。
キーワード 農業情報、多状態占有モデル、発生動態解析、カテゴリカル順序データ
背景・ねらい 広域病害虫の発生記録には、「甚・多・中・少・無」といった順序データしか残っていないケースが多々ある。これらの情報は、一般的な統計解析手法での取り扱いが難しく、発生動態の解明や分布拡大阻止対策の構築に効果的に活用されてこなかった。近年、生態学分野でも適用が進められている多状態占有モデルでは、こうした情報を充分に活用して生物の動態解析が可能である。そこで本研究では、多状態占有モデルを活用した病害虫の発生動態解明手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. マツ枯れ病は、マツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリ(以下カミキリ)によって媒介されることで引き起こされる。東北地方では1980年はじめから被害の拡大が進んでおり、分布拡大要因の解明や拡大阻止への対策技術開発が望まれている。東北全域の208市町村におけるマツ枯れの発生量と媒介カミキリ捕獲量が東北林業試験研究期間連絡協議会によって1980年から2011年まで、それぞれ「無・少・多」のカテゴリカルな発生量順序情報として記録されている(図1)。
  2. このマツ枯れ・カミキリ発生情報を多状態占有モデルにより解析する。多状態占有モデルでは、誤情報などのエラーを加味しつつ発生量状態の時間変化を記述することで、カテゴリー分けされた情報であっても、データを最も説明する発生動態を推定することが出来る。
  3. 正確には観察できない「真」のカミキリ個体数変動(図2、赤枠部分)を、「真」の枯死量や、カミキリ自身の密度、環境要因(図2、黒枠変数部分)などとの関係性を考慮した状態としてモデル化する。調査データはこのモデルからのサンプリングとして観測されたと定義する(図2、白枠変数部分)。
  4. モデルに組み込む環境要因として、農業環境情報(気象データ:メッシュ農業気象データシステム、植生データ:農業景観調査情報システム)から各市町村の各年の、カミキリの成長適温×日数(=積算温量)、降雨日数、マツの植生量データ(海岸・陸地で区別)を抽出した。また、近隣市町村からの媒介カミキリの流入量(=近隣カミキリ密度)をモデルに組み込み、カミキリ自身の個体数が動態に与える影響を調べる。
  5. 大量のシミュレーションによるモデルの当てはめの結果、東北南部の暖かい地域においてカミキリが増殖して高密度を維持し易くなり、マツ枯れ被害を拡大していることがわかる。またカミキリの年平均移動速度(=平均影響範囲)は6.6kmと推定される。
成果の活用面・留意点
  1. 市町村や都道府県を単位としたカテゴリカルな病害虫発生予察データなどから動態解明を行うために有効な手法である。観察されていない「真」の関係を変数として用いるためには、対象生物の動態に関する知見は不可欠である。
  2. 農研機構が整備を進める気象データ等の農業環境情報と、他機関から公表された長期広域害虫データとの融合的利用の実例である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029873
カテゴリ 害虫

この記事は