コムギの粒数を制御する遺伝子

タイトル コムギの粒数を制御する遺伝子
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究課題名
研究期間 2013~2018
研究担当者 小松田隆夫
杉本和彦
佐久間俊
発行年度 2018
要約 コムギの粒数(種子数)は、収量に直結する要因である。量的遺伝子座解析の結果、コムギの粒数を制御する遺伝的制御因子が、オオムギの六条性遺伝子Vrs1の同祖遺伝子であることが判明した。この遺伝子を使うことで様々な多収性コムギ品種の開発が可能になる。
キーワード 多収性、粒数、コムギ、栽培化遺伝子、ゲノム
背景・ねらい コムギの改良は、一穂に着く種子の数を増やすことで収量増大が達成されてきている。しかし着粒数を制御する遺伝子についてはこれまでわかっていない。本研究では、コムギの種子数を制御する遺伝子を明らかにすることにより、育種に使用可能なマーカー開発を目指す。そのために、コムギ品種の自然変異の中から一小穂に着く種子数を増大させる量的遺伝子座(QTL)とその遺伝子がコードする遺伝子産物を同定する。また、その遺伝子の生物的機能を明らかにし、通常の育種規模の圃場実験をおこなった上で、多収に対する効果を検証する。
成果の内容・特徴
  1. デュラムコムギ(四倍性)品種の一小穂あたりの粒数を決定するQTLが2A染色体にマップされ、連鎖地図に基づく手法でQTLの原因となる遺伝子GNI1-Aが単離された。塩基配列解析の結果はこのGNI1-A遺伝子がオオムギの六条性遺伝子Vrs1の同祖遺伝子で、植物にだけ存在するHD-ZIP I型の転写因子タンパク質をコードすることを示す。多収型の品種ではこの転写因子のDNA結合ドメインにある105位のアスパラギン(N)がチロシン(Y)へ変化し(Y型系統)、野生株(N型系統)に比べて一小穂あたりの粒数が増大している(図1)。
  2. N型の普通系コムギ(六倍性)でこの遺伝子に対してRNAiによる遺伝子機能低下実験を行なったが、図2の結果は一小穂に着く粒の数が上昇することを示している。このことは、この遺伝子が本来粒数を抑制する働きを持っていること示し、この機能はオオムギの同祖遺伝子と基本的に同じであることを示している。RNAiの代わりにガンマー線で誘発した突然変異系統を調査した場合でも、図3に示す通りY型とN型の系統の間に有意な粒数の違いがみとめられ、しかもこの遺伝子型の収量の増加に対する効果は、標準的なコムギ育種の収量試験に使われる圃場規模の実験結果によっても明快に実証されたといえる。さらに、ヨーロッパを中心とする200品種程度の栽培コムギの自然変異を分析した場合でも、105Y型と105N型間に有意な粒数の差が認められることから、この転写因子の変異が粒数の制御因子であることがあきらかである。上記、自然変異集団にしめる105Y型の割合は、約30パーセントである。
  3. この遺伝子は栄養成長期の組織では発現せず生殖成長期の幼穂で強く発現し、幼穂の器官別にみると、この遺伝子は小穂発達の初期には小穂分裂組織で発現し(図4A)、花器官の発達が進むにつれ小花分裂組織(図4B、C)、小穂軸(図4D、E)と、順次発現する器官が変化することから、この発現パターンの変化は、オオムギの同祖遺伝子のそれと基本的に一致し、発達段階によって異なる器官発達をこの遺伝子が抑制していることを意味する。
  4. このN105Y変異は、栽培化型四倍性コムギに多粒化をもたらし、さらに既存の六倍性普通系コムギの一部にも受け継がれ、多収に貢献している。したがってこの遺伝子は多収性の選抜マーカーとして利用可能である。
成果の活用面・留意点
  1. この転写因子に見いだされる遺伝子多型は、様々な多収性コムギ品種の開発に使用できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029843
カテゴリ 育種 大麦 多収性 品種

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