イネの複合病害抵抗性におけるタンパク質チロシンリン酸化の役割

タイトル イネの複合病害抵抗性におけるタンパク質チロシンリン酸化の役割
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究課題名
研究期間 2010~2017
研究担当者 菅野正治
前田哲
林長生
梶原英之
井上晴彦
姜昌杰
高辻博志
森昌樹
発行年度 2018
要約 イネのBSR1遺伝子は、いもち病や白葉枯病等の複数のイネの病害に対する抵抗性に重要である。BSR1タンパク質は、タンパク質チロシンリン酸化活性を持ち、イネがいもち病や白葉枯病抵抗性を発揮する際、この活性が重要な役割を果たす。
キーワード イネ、病害抵抗性、シグナル伝達、タンパク質リン酸化、チロシンリン酸化
背景・ねらい 我々はこれまでにイネのBSR1遺伝子がいもち病や白葉枯病等4種の病害に対する抵抗性において重要であること、またキチンにより誘導されるイネの防御シグナルがBSR1を介して伝達されることを報告している(2016及び2017年度研究成果情報)。しかしながら、BSR1がどのようにシグナルを伝達し病害抵抗性に関与するかは謎である。本研究では、生化学的手法を用いてBSR1タンパク質の機能を明らかにするとともに、BSR1遺伝子の複合病害抵抗性における機能を分子生物学的・病理学的手法を用いて解明することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. BSR1タンパク質のアミノ酸配列はタンパク質リン酸化酵素と高い相同性を示す。BSR1タンパク質の機能を詳細に検討するために、BSR1を大腸菌で過剰発現させた後に精製し、試験管内でATP存在下に反応させると、自らをリン酸化する(図1)。これまでの知見から、リン酸化活性に必要と予想されるアミノ酸を他のアミノ酸に変異させると、リン酸化活性がなくなる(K123M、D222A)(図1)。また、N末端の69アミノ酸残基はリン酸化活性に不要であるが、91アミノ酸残基はリン酸化活性に必須である(図1)。
  2. 動物では、チロシン残基のリン酸化が免疫等で重要であることが知られているが、植物の病害抵抗性でのチロシンリン酸化の役割についての研究は遅れている。BSR1タンパク質はチロシン残基がリン酸化を受ける(図2左)。リン酸化活性が失われた変異型BSR1では、チロシンリン酸化が見られない。また、質量分析法による結果ではN末端から63番目のチロシン残基(Y)がリン酸化されている(図2右)。
  3. イネの病害抵抗性におけるBSR1のリン酸化活性の関与を知るために、リン酸化活性が失われた変異型BSR1を過剰発現させたイネを作製し、いもち病や白葉枯病抵抗性を検定した。野生型BSR1過剰発現イネは両病害に抵抗性であるが、リン酸化活性を持たない変異型BSR1過剰発現イネでは、両病害に対する抵抗性が野生型とほぼ同等になる(図3)。このことはBSR1のリン酸化活性が複合病害抵抗性で重要であることを示す。
  4. イネの病害抵抗性において、BSR1のチロシンリン酸化が重要か否かを知るために、63番目のチロシンをアラニン(A)に変異させ、チロシンリン酸化が起こらない変異型BSR1を過剰発現させたイネを作製した。いもち病や白葉枯病抵抗性を検定したところ、野生型BSR1過剰発現イネと比べ、チロシンリン酸化が起こらない変異型BSR1過剰発現イネでは、両病害に対する抵抗性が大きく低下する(図4)。このことは、BSR1のチロシンリン酸化が、複合病害抵抗性で重要な役割を果たすことを示す。
成果の活用面・留意点
  1. ゲノム情報の解析より、コムギ等他の単子葉植物でも、BSR1と同様の機能を持つタンパク質の存在が推測される。今回のBSR1による抵抗性機構の解明は、単子葉植物において広範囲の病害に対する抵抗性品種育成の基盤になると期待できる。
  2. 特に、BSR1高発現作物を実用化する際には、BSR1による抵抗性機構の解明が必須であり、本研究成果は実用化に向けた重要な知見となる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029840
カテゴリ いもち病 抵抗性 抵抗性品種 病害抵抗性

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