Fusarium asiaticumにおけるデオキシニバレノール産生調節機構

タイトル Fusarium asiaticumにおけるデオキシニバレノール産生調節機構
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究課題名
研究期間 2016~2018
研究担当者 岩橋由美子
発行年度 2018
要約 F.asiaticumにおいて、デオキシニバレノール(DON)産生時には代謝など様々な変化が見られるが、これらは植物側の抵抗を抑制して増殖をするために必要な応答である。TOR(target of rapamycin)の阻害剤であるラパマイシンはF.asiaticumの生育を著しく抑制し、低濃度でもDONの産生を阻害する。
キーワード 赤カビ、Fusarium、デオキシニバレノール(DON)、アグマチン、ラパマイシン
背景・ねらい 赤カビ類が産生するマイコトキシンの一種であるデオキシニバレノール(DON)は、大量に摂取すると嘔吐などを引き起こす。さらに低濃度での長期間のDONの暴露が、子供など健康弱者の体重の減少や免疫力の低下などを引き起こすことが明らかになっている。赤カビ病対策の最終目的はカビの防除だけではなくカビ毒汚染の低減である。DONの産生は環境要因や宿主植物などの条件によって変動するが、その調節機構は明らかになっていない。
本研究では、Fusarium asiaticumを用いてDON産生の調節機構を解明する。得られる知見により、防除の時期を逸したり、雨で防除薬剤が流れたり、倒伏したりして万一赤カビが微発生しても、DONを蓄積させない抵抗性品種や防除用薬剤の開発に資する。
成果の内容・特徴
  1. DONの産生調節機構の解析のため、条件によってDONの産生量をコントロールすることができるF. asiaticumを用いる。
  2. アグマチンなどのポリアミン類は植物細胞の抵抗性物質の一つであり、F.asiaticumはその抵抗に反応する。F.asiaticumは、ポリアミン類を自身に取り込みγ-アミノ酪酸(GABA)などに変換する(表1)。それらを情報伝達物質として遺伝子群の発現及び代謝産物量が変化する。特に、解糖系とペントースリン酸回路の代謝物の増加が特徴的であり、これは増殖のために必要なエネルギーと細胞構成物質の調達のためであると考えられる(図1)。また、DONの基質の一つであるアセチルCoA産生のためにグリオキシゾームが発達する(表1)。
  3. DON産生時のF. asiaticumではピルビン酸脱水素酵素を抑制するピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性化により、解糖系が活性化しているにも関わらずTCA回路は抑制状態にある。これによりミトコンドリアのアポトーシスを防いで急速な増殖を可能にしている。同時にペントースリン酸経路の活性化によって核酸合成、NADPHなど組織合成に必要な物質を得ている。この時TOR関連遺伝子の発現量が増加する(表2)。
  4. TORの阻害剤であるラパマイシンはF.asiaticumの生育を著しく阻害する(図2)。生育を阻害しない低濃度のラパマイシンでも、DONの産生は阻害される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 赤カビ抵抗性麦類の育種に際し、赤カビのDON産生調節遺伝子を刺激しないように注意する。具体的には、植物体内でのポリアミン類の産生は最小限にするような育種を行う。
  2. DONの産生抑制にはTOR遺伝子の発現抑制が有効である。TOR遺伝子抑制物質を探索することで、赤カビの生育及びDON産生抑制剤の新たな開発に資することが期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029801
カテゴリ 育種 抵抗性 抵抗性品種 防除 薬剤

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