牛病原細菌Histophilus somni野外分離株の遺伝的多様性と時間的変遷

タイトル 牛病原細菌Histophilus somni野外分離株の遺伝的多様性と時間的変遷
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究課題名
研究期間 2014~2015
研究担当者 上野勇一
寺谷知恵
三角和華子
星野尾歌織
高松大輔
田川裕一
勝田賢
発行年度 2018
要約 牛に様々な病気を引き起こす病原細菌Histophilus somniは遺伝的に多様である。国内では、1989年以前は遺伝的に近縁な菌株による髄膜脳脊髄炎が多発しているが、1990年以降は多様な菌株による呼吸器病の割合が増加している。
キーワード Histophilus somni、遺伝的多様性、髄膜脳脊髄炎、呼吸器病
背景・ねらい 牛病原細菌Histophilus somniは反芻獣を自然宿主とし、牛に対して髄膜脳脊髄炎、呼吸器病および流産などを引き起こし、家畜の生産性に影響を及ぼす。これらの病態がどのような特徴を持つ菌株によって引き起こされているのかを明らかにすることは、本菌感染症を理解し、対策を講じる上で重要である。しかし、通常の細菌検査に用いられる血清型別等の手法を本菌に応用することは難しく、本菌には菌株の特徴を把握するための一般的な手法がこれまで存在しない。
本研究では、H. somniが保有する主要外膜蛋白質(MOMP)遺伝子を標的とした塩基配列解析、およびゲノムDNA全長を標的としたパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)により、野外株の遺伝的特徴および多様性を明らかにする。さらに、遺伝的特徴と分離宿主の病態や分離年代との関連を調べることにより、国内での本菌感染症の発生の実態を病原体の側から把握する。
成果の内容・特徴
  1. 牛由来H. somni分離菌株はMOMP遺伝子の塩基配列解析により7つのグループ(Ia、Ib、II、III、VI、VII、およびVIII)に、PFGE解析により8つのグループ(HS1、HS3~HS6、およびHS8~HS10)に分類され、遺伝的に多様である。
  2. 髄膜脳脊髄炎のほとんど(51株中45株)が遺伝的に近縁な株(MOMP遺伝子グループIaおよびPFGEグループHS1)によって引き起こされており(図1A、1B)、これらのグループに分類される菌株は、髄膜脳脊髄炎を引き起こすリスクの高い菌株であることが推測される。一方、呼吸器病など髄膜脳脊髄炎以外の病態の牛や臨床的に健康な牛からは遺伝的に多様な菌株が分離される(図1A、1B)。
  3. 国内では、1989年以前は遺伝的に近縁な株による髄膜脳脊髄炎が主要な病態である(図2A、2B)。一方、1990年以降はその割合は減少し、遺伝的に多様な菌株による呼吸器病が主要になっている(図2A、2B)。
成果の活用面・留意点
  1. 今回実施した2つの解析手法により、野外分離菌株の遺伝的多様性を病態と関連付けて理解することができる。
  2. 1990年以降に分離されている遺伝的に多様な菌株は、それぞれ由来が異なると推測できる。同一農場や地域で分離菌株の遺伝子グループを比較することにより、本菌の感染を防ぐための衛生対策に重要な、伝播経路の解明が期待できる。
  3. 本菌による髄膜脳脊髄炎の発生は1990年以降も続いている。髄膜脳脊髄炎に関連した特定のグループに属する菌株が共通に有する特徴を解析することにより、その発病メカニズムの早期解明が期待できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029760
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