トマトに耐塩性を付与する新たなエンドファイト細菌

タイトル トマトに耐塩性を付与する新たなエンドファイト細菌
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター
研究課題名
研究期間 2016~2017
研究担当者 田中福代
大脇良成
岡﨑圭毅
キン トゥザー・ウィン
発行年度 2018
要約 新たに分離したACC分解能を有するエンドファイトであるシュードモナス属細菌OFT5を塩ストレスを与えたトマト接種すると、光合成や吸水力の低下が軽減され、生育抑制は緩和される。
キーワード ACC分解能、トマト、エチレン、エンドファイト、耐塩性
背景・ねらい 植物はストレスを受けるとエチレンを生産することにより抵抗性を発揮するが、このストレスエチレンは多くの場合過剰に生産されて、収量や品質の低下をもたらすことが知られている。このため、生産環境条件などの外部ストレスの緩和は高品質作物の安定生産の重要な要件である。一方、エチレンの前駆体ACC(1-アミノシクロプロペンカルボン酸)を分解する菌が知られており、その機能を利用したエチレンの抑制が期待されている。
本研究では、植物から分離したACC分解細菌の作物への接種効果について、特に過剰なストレス応答の軽減に着目し、トマトの塩ストレスを例に明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 本成果はACC分解能を持つシュードモナス属細菌(OFT5)を塩ストレスを与えたトマト苗に接種すると、生育初期の耐塩性が高まることを示したものである。
  2. 定植時にエンドファイトを接種したトマト3週苗に塩化ナトリウムを処理(75mM、500ml;以下塩処理)すると、処理17日後の対照区の乾物重は29.5%低下したが、OFT5接種では乾物重の低下は認められない(表1)。この時、OFT5接種区においてもナトリウムの吸収は増加する。
  3. 対照区の葉面積は塩処理により50%低下するが、OFT5接種により21%の低下に軽減される。葉の最大水分保持量に対する水分含有量の比である葉の相対水分含量は、OFT5接種時に低下が緩和される。葉面積当たりクロロフィル含量は塩処理で増加し、特にOFT5接種で顕著にみられる(表1)。これは、葉が厚みを増したためと推定できる。
  4. トマト葉の光合成速度は塩処理により低下するが、OFT5接種では軽減される(図1)。この現象は光合成に関連する気孔開度や蒸散量についても同様である(データ略)。
  5. トマト芽生えのエチレン発生量は200mMの塩化ナトリウムを添加すると増加し、OFT5を接種すると低下する効果がある(図2)。エチレン生成量は、OFT5非接種でのみ有意に増加し、OFT5接種により過剰なストレス応答が緩和されたものと推定する。
成果の活用面・留意点
  1. OFT5は有機栽培のカブから分離したエンドファイトであり、16S rRNA塩基配列の相同性が98.8%以上の基準株は報告されていない。
  2. エンドファイトは菌懸濁液に種子または根を浸漬することにより接種する。
  3. 塩化ナトリウム処理によるトマトの生育や光合成関連の応答パターンは塩化ナトリウム濃度に依存する。本成果は、ストレス強度が中程度以下の事例である。
  4. OFT5が耐塩性を高める作用機作は今後の検討が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029755
カテゴリ かぶ 栽培技術 抵抗性 トマト

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