植物検疫におけるファイトプラズマとキシレラの効率的診断マニュアル

タイトル 植物検疫におけるファイトプラズマとキシレラの効率的診断マニュアル
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究課題名
研究期間 2013~2017
研究担当者 伊藤隆男
中畝良二
発行年度 2018
要約 世界的に重要な植物病原細菌であるファイトプラズマおよびキシレラを、多様な植物から簡易に同時検出するマニュアルである。偽陽性や偽陰性のリスクが低く、種の推定も可能であり、植物検疫業務を効率よく進めることができる。
キーワード ファイトプラズマ、キシレラ、植物検疫、ユニバーサル・マルチプレックスPCR、マニュアル
背景・ねらい ファイトプラズマ属('Candidatus Phytoplasma' spp.)とキシレラ属(Xylella spp.)細菌は、果樹を中心に共通の宿主も多く、多様な植物に感染して深刻な被害をもたらす(図1)。それぞれに新たな宿主や新種・亜種が発見されるとともに、世界的な発生地域の拡大が続いており、日本では多くが検疫有害動植物に指定されている。一方で、物流の活発化が進んで、従来の検査法よりも簡易、迅速、低コストで高精度な検査法が求められるようになってきた。そこで、感度または特異性が既存の国際標準検査法よりも優れ、両属細菌の全種・亜種の感染と偽陰性の有無を、多様な植物から短時間で判定可能な診断手法を新たに開発した(2017年度研究成果情報http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2017/nifts17_s23.html)。本手法について、国内および海外の植物検疫の現場で活用するためのマニュアルを作成する。
成果の内容・特徴
  1. 日本語と英語で併記した診断マニュアルは、ウェブサイト(protocols.io)上にあり、デジタルオブジェクト識別子(DOI)が付与され、世界中の誰もが恒久的に利用できる(アカウントの作成は必要)(図2)。本サイトの「Abstract」ページから、日本語と英語で併記した診断マニュアルのPDF版をダウンロードできる(図3)。
  2. 本マニュアルは、ブドウを対象として作成しているが、他の植物にも応用可能であり、簡易抽出試料を利用することもできる。機器の有無により通常のPCR法あるいはリアルタイムPCR法を使い分けて診断する。
  3. リアルタイムPCR法を用いた場合は、ファイトプラズマとキシレラ由来のDNAを同時に増幅し、増幅蛍光の発生により感染を容易に判断できる。宿主植物に由来するDNAの増幅も行うので、偽陰性も同時に判定可能である。閉鎖環境下で解析を行うために、偽陽性につながる増幅産物の交差汚染は起きにくい。誤って汚染が生じた場合も、増幅産物の分解過程(UNG処理)をPCRサイクルに組み込んでいるため、リスクを抑えることができる。
  4. リアルタイムPCR法は、最大96検体を50分程度で解析できる。1検体に複数の試料を混合することも可能で、1検体当たりのコストは100円程度である。必要に応じて、増幅産物をダイレクトシーケンス解析することで、特異的増幅の確認や種の推定などの確定診断を下すことも可能である。
  5. ほぼ全ての既知の細菌種について決定され、分類基準となる16S rRNA遺伝子の属内共通塩基配列を診断の標的としており、未知の種・亜種であっても検定漏れの可能性は低いと考える。プライマー・プローブの塩基配列も公表しており、新種・亜種が追加された場合は、標的配列と相同性比較をするなどして、事前にリスク管理できる。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:国内および海外の植物病検査機関
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本国内の植物防疫所の5本所(横浜、神戸、名古屋、門司、那覇)、並びに主要空港の4支所(成田、中空、関空、福岡)・百~数千検体/年間(昨年度からの実績:神戸植防管内で累計150検体以上、ウェブサイト閲覧数の累計400以上)
  3. その他:診断マニュアルは随時更新する。ファイトプラズマと宿主植物の検出用プライマー・プローブは、国際的に信頼されるマニュアル専門書(Methods in Molecular Biology. 2019. 1875:117-130)で、既存の国際標準検査法で使用されるプライマー・プローブと同等に併記されている。今後、植物防疫所の意見も聞きながら、国際標準化を目指す。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029677
カテゴリ コスト 植物検疫 診断技術 低コスト ぶどう

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