木材の繊維に直交する(横)方向の変形や破壊現象へ影響する因子を探る

タイトル 木材の繊維に直交する(横)方向の変形や破壊現象へ影響する因子を探る
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 三好 由華
神代 圭輔
古田 裕三
発行年度 2019
要約 木材の乾燥や変形加工の制御に不可欠な情報となる繊維に直交する(横)方向の力学的性質への影響因子を評価する手法を確立し、木材中の破壊されやすい部位や変形しやすい条件を組織構造の観点から明らかにしました。
背景・ねらい 木材は不均質な組織構造をもつため、その力学的性質は繊維に沿った(縦)方向と繊維に直交する(横)方向で大きく異なります。特に、横方向の力学的性質は「木材の乾燥割れを防ぐ」ことや「自在な形状に木材を変形させる」ために不可欠な情報です。しかし、横方向の力学的性質は木材の組織構造の影響を受けてばらつきが大きいため、複雑なものとして十分に研究が進められてきませんでした。本研究では、組織構造の変形や破壊の現象を敏感に捉えることができる試験条件を検討し、横方向の力学的性質へ関与する因子を評価する手法を確立しました。これにより、木材中の破壊しやすい部位や変形しやすい条件を組織構造の観点から明らかにしました。
成果の内容・特徴
横方向の力学的性質は木材の乾燥や変形加工において重要な要素
 木材の繊維に沿った(縦)方向の力学的性質は、柱や梁の強さといった、建築物の強さに直接かかわる重要な性質であるため、これまでに数多くの研究が行われてきました。一方で、繊維に直交する(横)方向の力学的性質は、木材中の水分量や木材の組織構造の影響を受けて複雑なふるまいを示し、樹種ごとのばらつきも大きいことから、何の因子がどのように力学的性質の発現に関与しているか評価する手法がこれまでに確立されておらず、研究も少ない状況にありました。
 しかし、横方向は木材の乾燥や変形加工の際に、引っ張られる力(引張応力)によって割れが発生する方向であるため(図1)、木材を「割れないように乾燥する」ことや「自在な形状に変形する」ためには、横方向の力学的性質は制御するべき重要な要素です。そこで、本研究では、横方向の力学的性質へ関与する因子を評価する手法を確立し、まずは、変形や破壊現象に及ぼす組織構造の影響を明らかにすることを目指しました。
組織構造の影響を際立たせる実験手法の確立
 横方向の変形や破壊現象へ組織構造が及ぼす影響を明らかにするためには、細胞が変形しやすく、しかも、どこで破壊したかを観察しやすい試験片形状である必要がありました。そこで、様々な樹種(図2)から0.1mm厚の薄い試験片を作製し、引張試験を行いました。引っ張る方向に対して年輪が平行(0°)、直交(90°)、その中間(45°)となる試験片を用いることで、細胞の形が変形しやすい条件を明らかにすることができました(図3)。また、顕微鏡写真を観察することで、木材中の破壊しやすい細胞や部位を明らかにすることができました。
横方向の変形や破壊現象は組織構造に大きく支配されている
 結果の一部を図4に示します。強度(破壊時の応力)は、放射組織が発達した広葉樹において大きい傾向を示しますが、道管が環状に配列したケヤキでは低く、道管を持たないヤマグルマでは高い値を示しました。また、破壊ひずみ(破壊までの変形量)は、同程度の密度にも関わらずスギとヒノキで大きく異なりました。横方向の力学的性質は、縦方向とは異なり、密度と明確な関係を示さない場合があることが明らかになりました。また、放射組織の幅、道管の大きさや配列など木材の組織構造の特徴が、横方向の力学的性質に大きく影響を及ぼしていることを示すことができました。この成果は、木材の乾燥や変形加工の過程において割れを防ぐためには、何の因子に着目して、どのような制御を行えば良いか考えるための基礎的な知見となります。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029574
カテゴリ 加工 乾燥

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