間伐時の渓流水の濁りの発生と作業道の影響

タイトル 間伐時の渓流水の濁りの発生と作業道の影響
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 篠宮 佳樹
小林 政広
坪山 良夫
澤野 真治
発行年度 2019
要約 列状間伐が行われたスギ人工林を流れる渓流水で濁りの発生について調べた結果、作業道の影響 と推定される渓流水の濁りが認められました。森林施業の際には作業道の影響に配慮する必要性 が明らかになりました。
背景・ねらい 作業道開設をともなう列状間伐が実施された茨城県のスギ人工林の流域で、河川の濁りの原因とされる懸濁物質(Suspended Sediments; 以降SS)の流出について調査しました。流域面積の17%に対して本数で35%の列状間伐という比較的小面積の施業にも関わらず、間伐実施前に比べて間伐実施中の出水時のSS濃度が上昇することが確認されました。今回観測された濁りの原因として、現地の状況から谷沿いに開設された作業道の影響が推定されました。
成果の内容・特徴
森林施業と渓流水の濁り
 渓流水に含まれるSSは河川の濁りの原因とされ、しばしば問題となっています。SSの著しい流出は魚類や藻類など河川や海の水生生物の生育環境を悪化させると考えられています。一方で、林業の活性化のためには、新たな作業道を開設し搬出効率の良い列状間伐を行うなどの森林施業を進めることも重要です。多面的機能に配慮しつつ林業を活性化するためには、森林施業とSS流出の関係を明らかにすることが重要です。
作業道開設を伴う列状間伐中の渓流水の濁り
 茨城県のスギ人工林で、本数で35%の間伐率の列状間伐が実施され、伐採木の搬出のため5つの谷沿いに作業道が開設されました(図1、図2)。間伐の対象は観測点から上流の面積の17%です。
 SS濃度は流量の影響も受けるため、流量も考慮しながら間伐の影響を評価する必要があります。同じ流量範囲(約0.2mm h-1以下)で比べると、間伐実施中のSS濃度に間伐実施前より高い値がいくつか出現しているのがわかります(図3)。このように部分的な間伐でも間伐実施中のSS濃度の上昇が認められました。ただし、従来の研究では、伐採地の渓流で観察されるSS濃度の最高値は1,000 mg L-1オーダーと言われていますが、今回観測された濁度はそれに比べればはるかに低いものでした。これは、間伐域以外からの流入水による希釈効果が表れていると考えられます。
増えたSSはどこからきたのでしょう?
 列状間伐が行われた林地には、表土の露出など目立った攪乱箇所は見当たりませんでした(図2)。これに対して、間伐実施中の作業道は裸地状態にありました(図4)。間伐は林地浸食の防止に効果があると言われる一方で、間伐に伴って作業道や林道から濁水が流入している事例が報告され、濁水の流出に関しては伐採作業そのものよりも作業道の影響が大きいという指摘もあります。林内の作業道で濁水が発生したとしても、通常は落葉層や土壌層の濁水ろ過機能により浄化されることも期待できますが、今回の作業道の大部分は、浅い谷地形に沿って開設されており、渓流との間に緩衝域がありませんでした。普段は流水が無い谷ですが、降雨の際には作業道に表流水が発生し、濁水が直接渓流に流れ込んだと考えられます(図1、図5)。つまり、SSは林地ではなく、谷地形に作られた作業道の路面から発生したと考えられます。
 今回の観測の結果、濁水の発生においては作業道の影響が大きいことが認識されました。森林資源の持続的な利用のため、環境への影響に十分な配慮が必要な流域においては、作業道からの濁水の発生を低減する技術が必要です。今回の研究結果を今後の技術開発に活かしていきたいと考えています。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029562
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