雪崩の流下を妨げて災害を軽減する森林のはたらき

タイトル 雪崩の流下を妨げて災害を軽減する森林のはたらき
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 竹内 由香里
西村 浩一
発行年度 2019
要約 森林には雪崩の流下を妨げて災害を軽減する効果があることを、初めて定量的に示すことができました。本研究の成果は災害軽減効果の高い森林の配置や造成に役立ちます。
背景・ねらい 山地の森林は、雪崩の流下を妨げて災害を軽減するはたらきがあります。この森林の減勢効果については、早くから経験的に知られていましたが、定量的に評価されたことはありません。本研究では、新潟県および岩手県において実際に発生した表層雪崩を対象として、森林の減勢効果を数値モデルで確かめました。これらの雪崩は高速で森林に流入し、広範囲の樹木を倒壊しましたが、森林内で停止しました。数値モデルで森林がない場合を仮定して雪崩の流下をシミュレーションした結果、雪崩は実際より長距離を流下し、森林の減勢効果を初めて定量的に示すことができました。この成果は、災害軽減効果の高い森林の配置を具体的に示すのに貢献できます。
成果の内容・特徴 雪崩災害を軽減する森林のはたらき
 山地の森林には雪崩の発生を防ぐ効果とともに、雪崩が発生した場合には流下する雪崩の進行を妨げる減勢効果があることが、早くから経験的に知られていました。しかし、森林の減勢効果に関わるデータを得ることは難しく、森林の効果を定量的に示すことができませんでした。本研究では、実際の雪崩に関するデータを元に森林の減勢効果を定量的に表わすことを目的として、雪崩の運動モデルを用いたシミュレーションを行ないました。 
妙高山域幕ノ沢と岩手山で発生した雪崩
 対象としたのは、2008年2月に新潟県の妙高山域の幕ノ沢および2010~2011年冬期に岩手山で発生した大規模な表層雪崩です。雪崩は森林のない標高の高いところで発生し、下流の森林に高速で流れ込みました。雪崩によってスギ林や亜高山帯林の多数の立木が倒壊しましたが、いずれの雪崩も森林より下流へ行くことはなく、森林内で止まりました。これらの雪崩の到達範囲や立木の直径、本数密度、折損状況などの現地調査により森林の減勢効果の解明につながる貴重なデータが得られました(図1、図2)。
雪崩の減勢効果を示した数値シミュレーション
 現地調査の結果にもとづき、雪崩の運動モデルを用いて実際の地形上で雪崩の流下を再現し、森林がある場合とない場合の雪崩の速度や流下距離を比較しました。妙高山域の幕ノ沢において森林がないと仮定したシミュレーションを行なった結果、雪崩はスギ林内を流下した実際の雪崩より約200mも遠くまで流下する結果になりました(図3a)。つまり、幕ノ沢のスギ林は、雪崩を減速させ、流下距離を200 m縮める減勢効果があったといえます。同様に岩手山の雪崩についても森林がないと仮定してシミュレーションを行なった結果、森林内を流下した実際より200 m~600 mも遠くまで流下した可能性が示されました(図3b)。
 雪崩の発生を防ぐ森林の効果については、早くから多くの研究がありましたが、流下する雪崩に対しても森林は減勢効果があることを初めて定量的に示すことができました。この手法は、今後、災害軽減効果の高い森林の配置を具体的に示して造成することに貢献できると考えています。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029561
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