気候変動で北海道の産地でワイン用ブドウ「ピノ・ノワール」が栽培可能に

タイトル 気候変動で北海道の産地でワイン用ブドウ「ピノ・ノワール」が栽培可能に
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究課題名
研究期間 2016~2017
研究担当者 廣田知良
山﨑太地
安井美裕
古川準三
丹羽勝久
根本学
濱嵜孝弘
下田星児
菅野洋光
西尾善太
発行年度 2017
要約 1998年頃の気候シフト以降、北海道内の代表的なワイン用ブドウ産地で、高級赤ワイン用ブドウの代表品種の「ピノ・ノワール」の栽培適温域となっている。道内ではさらに栽培の拡大が期待される。
キーワード 気候シフト、地球温暖化、適応策、ワイン用ブドウ、ピノ・ノワール
背景・ねらい 北海道はワイン用ブドウが栽培できる気候的な北限とされており、これまで栽培できる品種は寒冷地向けの「ツバイゲルト」、「ケルナー」等に限られ、高級赤ワイン用ブドウ品種である「ピノ・ノワール」の栽培は困難であった。しかし近年、北海道内の代表的なワイン産地で「ピノ・ノワール」の栽培と質の良いワイン造りが可能となってきている。この要因に温暖化も考えられるが、詳細は十分に解明されていない。一方、Kanno(2013)は、北半球における高層大気場と海水面温度(SST)を用いた統計解析から、1998年を境に北海道を含む北日本で気候シフトが生じたことを明らかにしており(2013年度研究成果情報http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2013/tarc13_s16.html)、この境界年は、空知地方三笠市での「ピノ・ノワール」の最初の成功事例でのブドウを植え始めた栽培開始時期と一致する。そこで、「ピノ・ノワール」がなぜ、北海道で栽培可能になったか、生育期の平均気温の年次変動に着目して解析する。
成果の内容・特徴
  1. 1998年以降、生育期の4~10月の期間の平均気温は、北海道のワイン用ブドウ産地である後志地方の余市町や空知地方の三笠市で、14°C以上を安定的に上回る(図1)。これは世界の「ピノ・ノワール」産地の生育期間の温度帯(平均気温で14~16°C、以下、適温域とする)と整合する。
  2. その他の「ピノ・ノワール」栽培地では、上川地方の上富良野町も、4~10月が1998年以降に適温域に入り、さらに2010年以降は、オホーツク地方の北見市や、石狩地方の札幌市藤野も適温域に入る傾向にある(図2)。一方、道内ワイナリーで最も歴史のある十勝地方の池田町は、現時点では適温域に達してない。新たに「ピノ・ノワール」を含めワイン用ブドウ栽培を始めた同じ十勝地方の芽室町は、近年、4~10月の平均気温が14°C以上の年も現れはじめている(図2)。
  3. 十勝地方の池田町のビンテージチャートの評価から、1998年以降は良質なワイン用ブドウを生産できる傾向にある(図3)。各地域と北海道全体の気温の年々変動の傾向は同じとみなせるため、ここで示す結果は、近年、北海道の産地で生産されたブドウを用いて、質の良いワイン造りができる傾向が高くなっていることを意味する。
  4. 最新の長期再解析データ(1958~2015年)を用いて、北半球での200hPa高度とSSTの特異値分解解析をしたところ、1998年を境にした気候シフトを検出すると共に、1998年以降の北半球の海水面温度分布は太平洋数十年規模振動によりラニーニャ型が卓越し、北海道や日本を含む北半球の偏西風帯の変動と統計的に有意な関係を示すパターンのスコアが高い(図4)。図1の生育期の気温変動は、1998年を境に明瞭に異なっており、これは1998年以降のラニーニャパターンの卓越を要因とした北日本暖候季(生育期)の昇温傾向から説明できる。
成果の活用面・留意点
  1. ワイン用ブドウの栽培条件としては、気温だけでなく冬季の越冬条件や霜害リスクを十分考慮する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029524
カテゴリ 栽培条件 品種 ぶどう ワイン

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