菌の有機物分解能力を評価する ―マツタケ類の分解能力の多様性が明らかに―

タイトル 菌の有機物分解能力を評価する ―マツタケ類の分解能力の多様性が明らかに―
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 下川 知子
山口 宗義
村田 仁
山中 高史
発行年度 2018
要約 菌の有機物分解能力を簡単に把握するため、色素を結合した多糖類を用いた評価法を開発し、マツタケおよび近縁種の分解能力の多様性を明らかにしました。
背景・ねらい 菌根菌であるマツタケは、生きた樹木の根から養分を得て成長し、子実体(きのこ)を作ります。そのため、木を腐らせて養分を得る腐生菌であるシイタケやナメコなどのように、原木や菌床を用いた栽培は成功していません。しかし、木質成分である多糖などの有機物を分解する能力の高いマツタケ菌株を得ることができれば、栽培化の可能性が高まります。今回、色素を結合させた多糖類を用いて菌の分解能力を可視化する方法を活用することにより、マツタケおよびその近縁種がセルロースやデンプンを分解する能力は、種や菌株により異なることを明らかにしました。
成果の内容・特徴 色素結合多糖を含む培地の作製
 ポテトデキストロース寒天(PDA)培地に、色素を結合させた多糖類を添加します。1つはセルロース[ヒドロキシエチル(HE)セルロース]に色素を結合させたもの、もう1つはアミロースに色素を結合させたものです。二つの培地は菌が産出するセルラーゼ(セルロースを分解する酵素)やアミラーゼ(デンプンを分解する酵素)の活性を測定するために使います。これらの色素結合多糖類は不溶性であり、寒天培地の中で顆粒状に散在します。この培地に菌類を植えつけ、これらの多糖類を分解する酵素を生産すると、顆粒状の多糖類が分解されて消え培地全体に色素が拡がります(図1)。
分解能力の評価

 直径約5センチのシャーレに色素結合多糖類を含むPDA培地を作り、培地の中央に菌を植えて23℃で培養し、4週間後に分解の程度を評価しました。全く分解していない状態をレベル0、顆粒状の多糖類が全て酵素により分解された状態をレベル5とし、X軸方向にアミラーゼ活性を、Y軸方向にセルラーゼ活性をプロットしました(図2)。グラフの右上に行くほどセルラーゼおよびアミラーゼの活性が高くなります。この評価法を用いて日本産のマツタケおよびその近縁種の有機物分解能力を調べました。赤色のラインで囲われたグループにはマツタケやニセマツタケが入りました。緑色のラインで囲まれているのがニセマツタケです。青色のラインで囲まれたグループの中にはバカマツタケが入りました。マツタケの中にはセルラーゼ活性を示すものと全く活性を示さないものがあり、アミラーゼ活性については比較的高いものとそうでないものがありました。以上のように、分解能力はマツタケとその近縁種との間で、また同じ種の中でも菌株の間で異なることを明らかにしました。
菌株選抜・育種への応用
 菌床や原木を用いた栽培では、まず菌糸が蔓延し、その後子実体が発生します。多糖などの有機物を分解する能力は菌糸の成長にとって重要です。すでに、マツタケと同じ菌根性のきのこであるホンシメジでは、有機物分解能力が高い菌株を選抜し、それを用いて菌床栽培によるきのこの生産が可能になっています。今回の簡易な評価法を用いることで、重粒子線照射で作出したマツタケ変異株の中に野生株よりも有機物分解能力の高いものが存在することを確認できました。このように、有機物分解能力が高い菌株を選抜するのに今回の評価手法は有効です。今後も様々な菌種や菌株の特徴を評価しながら、菌根性きのこの人工栽培技術の開発を目指して研究を進めていきます。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029481
カテゴリ 育種 栽培技術 しいたけ なめこ 評価法

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