根のタンニンがアルミニウムを無毒化する ―酸性の荒廃地の緑化にむけて―

タイトル 根のタンニンがアルミニウムを無毒化する ―酸性の荒廃地の緑化にむけて―
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 田原 恒
橋田 光
平舘 俊太郎
篠原 健司
発行年度 2018
要約 ユーカリは、有毒なアルミニウムが植物の生育を妨げる酸性の土壌でもよく成長できる樹木です。アルミニウムの無毒化においては、ユーカリの根に含まれるタンニンが重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
背景・ねらい 世界の陸地の約3割を占める酸性の土壌では、有毒なアルミニウムが溶け出してきて植物の生育を妨げています。近年、私たちは、酸性の土壌でもよく生育できるユーカリの根から、アルミニウムを無毒化する新しい物質(タンニンの1種)を発見しました。ユーカリの根は、このタンニンの他にもアルミニウムを無毒化できる物質を含んでいますが、今回、ユーカリの根の中を再現した溶液を分析した結果、このタンニンがアルミニウムの無毒化に特に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。今後は酸性の土壌を効率的に緑化するための技術開発を指して、根の中でどのようにタンニンが合成されるのかを研究していきます。
成果の内容・特徴 アルミニウムが問題となる酸性の土壌
  世界の陸地の約3割は、酸性の土壌で覆われています。酸性の状態では、土壌から植物にとって有毒なアルミニウムが溶け出してきます。そのため、多くの植物は根を伸ばすことができず、養分や水分を吸収できなくなり、成長が悪くなったり枯れてしまったりします。
アルミニウム無毒化物質エノテインBの発見
 酸性の土壌や有毒なアルミニウムにも耐えて旺盛に成長できる植物に、オーストラリア産樹木のユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)があります(図1)。私たちは近年、ユーカリの根からアルミニウムを無毒化する新しい物質としてエノテインBを発見しました(図2)。エノテインBはタンニンの1種で、1分子で少なくとも4個のアルミニウムと結合することができます。エノテインBと結合したアルミニウムは細胞内の他の物質と結合しないため、植物にとって無毒になります。
アルミニウム無毒化におけるエノテインBの重要性
 ユーカリの根がエノテインBというアルミニウムを無毒化できる物質を含んでいることは確かです。しかし、ユーカリの根は、他にもアルミニウムを無毒化できる有機酸(クエン酸やシュウ酸)を含んでおり、根の中でエノテインBが実際にアルミニウムの無毒化に貢献しているかどうかは不明でした。今回、私たちは根の中に含まれるアルミニウムとエノテインB、有機酸の濃度を再現した溶液を作製し、アルミニウムがどの物質によって無毒化されるかを調べました(図3)。
 クエン酸やシュウ酸のみを加えた溶液では、有毒なアルミニウムが溶液中に残り、クエン酸やシュウ酸だけでは全てのアルミニウムは無毒化されていませんでした。一方、エノテインBを加えた溶液では、溶液中から有毒なアルミニウムが姿を消し、エノテインBが全てのアルミニウムを無毒化していました。また、エノテインB、クエン酸やシュウ酸を加えた溶液では、アルミニウムの半分以上がエノテインBと結合していました。これらの結果から、実際の根の中でもエノテインBがアルミニウムの無毒化に重要な役割を果たしていることが明らかとなりました。
酸性の荒廃地の緑化に向けて
 現在、エノテインBがユーカリの根の中でどのように合成されるのか、その仕組みを明らかにするための研究を進めています。それによって、アルミニウムに耐えられる樹木や作物の開発が可能となり、酸性の荒廃地の緑化や、酸性土壌での生産性の向上により、地球温暖化の原因である二酸化炭素の固定や、人口増加による食糧不足の緩和に貢献できます。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029480
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