様々な製品展開が可能な新素材「改質リグニン」のデザイニング

タイトル 様々な製品展開が可能な新素材「改質リグニン」のデザイニング
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 ネー ティティ
山田 竜彦
発行年度 2018
要約 スギ材から製造される新素材「改質リグニン」を用いた様々な製品を開発するには、用途に応じた物性を持つ改質リグニンの製造が重要です。製造工程を工夫することで、様々な特性を持つ改質リグニンの製造に成功しました。
背景・ねらい スギ材の約3割は「リグニン」という成分で構成されています。私達はスギ材のリグニンを、加工しやすい形に改質しながら「改質リグニン」として取り出す技術を開発し、実用化に向けた取り組みを進めています。改質リグニンから様々な製品を開発するためには、用途に応じて性質をコントロールすることが重要です。使用薬剤であるポリエチレングリコール(PEG)の分子量を変化させることで、改質リグニンのガラス転移温度(Tg)や熱溶融温度(Tf)などの物理的性質を自由にコントロールすることに成功しました。様々な用途に応じた改質リグニンのデザイニングが可能となっています。
成果の内容・特徴  木材にはリグニンという成分が2~3割含まれています。 リグニンは、木材をしっかりした構造にする役割をもつ化合物で、高い強度や耐熱性を示す優れた素材であることが知れています。しかしながら、リグニンは樹種や生育場所や部位により化学構造が異なるため、常に一定の性能が求められる工業製品化は困難でした。私達は、国内のスギ材のリグニンの特性が比較的均一であることを見いだし、スギ材から性能の安定したリグニンを取り出す独自の技術を開発しました。改質リグニンの製造には、ポリエチレングリコール(PEG)という化合物を用い、PEGで改質されたリグニンを木材から取り出しています(図1)。改質リグニンから、様々な製品を作り出すためには、それぞれの用途に応じた特性を持つ改質リグニンを製造するデザイニング技術が必要です。そこで、改質リグニンの製造に使用するPEGの種類と、改質リグニンの性質との関係を詳細に検討しました。
 スギ材は、PEG中の酸加溶媒分解という反応で分解され、PEGが結合した改質リグニンとして取り出されます。改質リグニンに熱を加えると、柔らかくなり、押し出したり引っ張ったりすることで、様々な形に加工することができました(図2)。図3に改質リグニン中のPEGの量と、ガラス転移温度(Tg)や熱溶融温度(Tf)との関係を示します。TgやTfの値が低いほど、熱で柔らかくなりやすい性質であることを示しています。分子の長さが異なるPEG(PEG200、PEG400、PEG600:数値はそれぞれ平均分子量が200、400、600を意味します)を用いて反応を進めたところ、分子の長いPEGを用いた方が、低い温度域のTgを示しました。これは、分子の長いPEGを用いることで、やわらかい特性をもつ改質リグニンを製造できることを意味しています。また、改質リグニン中に結合したPEGの量とTgとTfの関係においては、PEGの結合量が多いほど温度が低くなることがわかりました。これらは、使用するPEGの長さや結合量をコントロールすることで、様々な物性の改質リグニンの製造が可能となることを示しています。期待される用途のうち、3Dプリンター用フィラメントや射出成形用プラスチック樹脂として利用する場合は、比較的低い温度域で加工するため、低い温度域にTgやTfを示すPEG600の改質リグニンが適していました。一方、高い耐熱性が要求される電子基板用のフィルム化においては、比較的高い温度域にTgやTfを示す改質リグニンが有利で、PEG200が適していました。また、自動車の部材となる繊維強化材用の樹脂や、シーリング材料(ガスケット)として利用する場合、耐熱性と加工性のバランスのとれた温度域にTgやTfを持つPEG400の改質リグニンが適していました。このように、改質リグニンは1種類でなく、各製品に適する物性のものを製造時にデザイニングすることが重要です。これら改質リグニンを用いた高付加価値製品群の市場性は2000億円ともいわれ、木質バイオマスを用いる新産業として期待されています
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029478
カテゴリ 加工 高付加価値 薬剤

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