タイトル | 使える技術を総動員する新たな松くい虫被害対策 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究課題名 | |
研究期間 | |
研究担当者 |
中村 克典 前原 紀敏 相川 拓也 大塚 生美 佐藤 大樹 浦野 忠久 市原 優 井城 泰一 那須 仁弥 山野邉 太郞 中島 剛 後藤 幸広 谷内 博規 宮下 智弘 渡部 公一 杉本 博之 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 薬剤使用に対する制約が強まる中で対応が困難となっている松くい虫被害に対し、使える技術を総動員する新たな防除体系を提案しました。松林を「伐って使う」ことが、これからの松くい虫被害対策では重要になります。 |
背景・ねらい | 松くい虫被害に対しては駆除、予防、抵抗性マツの植栽による防除体系が確立されています。しかし、近年の農薬等薬剤の使用に対する制約によって、十分な防除ができずに被害が拡大する事態が起きています。そこで本研究では、①媒介昆虫を駆除する省労力で環境への負荷の少ない技術の効果を実証、②被害材の燃料利用を促進するモデルを提示し、③予防伐採推進に向けたアカマツ材のCLT製造技術を確立し、④被害地、未被害地、アカマツ林業地域のそれぞれで必要とされる抵抗性マツ利用技術を開発しました。そして、薬剤の使用が制約される中でも使える技術を総動員する、新たな防除体系提案しました。 |
成果の内容・特徴 | 環境低負荷で効率の良い松くい虫被害対策を求めて 松くい虫被害に対しては、駆除、予防、抵抗性マツの植栽を3本柱とする防除体系がすでに確立されています。しかし、農薬等薬剤の使用に対する制約が強まる中、特に予防のための殺虫剤散布が困難となり、被害の拡大を抑えられない事態が起きています。こうした状況下で松くい虫被害対策を着実に進めるには、使える技術を総動する取り組みが必要です。そのため、本研究では以下の4つの取り組みを行いました(図1)。 場面に応じた駆除手法選択 省労力で環境への負荷の少ない媒介昆虫の駆除技術として、天敵微生物製剤と被覆・粘着資材を利用した手法とりあげ、防除の現場での効果を実証しました。これらの手法をそれぞれの特性や場面に応じて使い分けることで、これまで作業を行うことが難しかった場所で駆除を実施し、また駆除にかかる労力や経費を削減できるようになりました(表1)。 松くい虫被害材の燃料利用を促進 被害材を燃料として利用すれば、松くい虫防除と木質資源の有効利用を両立できます。そこで、木質バイオマ発電所や地域熱電供給システムで被害材を利用する取り組みを岩手県で調査し、モノ(木材やチップ)と情報の流れを模式化しました(図2)。模式化したことで、被害材の利用を進めるために何をすべきか、どこがネックになっているのかを検討し、対処することが容易になりました。 高付加価値化で予防伐採を促進 未被害の松林を守るためには、周辺の松林を予防的に伐採することが有効です。この予防伐採を進めるには、伐った松がお金になることが重要です。そこで、松材の新たな用途を創り出して付加価値を高めるため、アカマツCLT(直交集成板)の製造技術を確立しました。 場面に応じた抵抗性マツ利用技術 被害地で求められる強抵抗性クロマツと、未被害地で求められるマツノザイセンチュウ非感染の抵抗性クロマツ採種木を作出する技術をそれぞれ確立し、苗木の育成を進めました。さらに、アカマツ林業の存続に向け、材質などの特性とマツノザイセンチュウ抵抗性をもとに適切な植栽品種を選ぶことができる検索システムを開発ました。 松林を利用し、松林を守る 以上の成果をまとめて、薬剤の使用が制約される中でも使える技術を総動員する、新たな防除体系を提案しました。松くい虫被害が広まってしまった状況で松林を維持存続するには、守るべき松林に防除対策を集中し、周辺の松林では樹種転換等によって松自体を減らす取り組みが求められます。本研究は、松林を「伐って使う」ことによる被害対策の重要性を示しています。 |
カテゴリ | 高付加価値 抵抗性 農薬 品種 防除 薬剤 |