オオムギを大粒化する遺伝子の同定と利用

タイトル オオムギを大粒化する遺伝子の同定と利用
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究課題名
研究期間 2013~2017
研究担当者 小松田隆夫
掘清純
呉健忠
田切明美
佐久間俊
Udda Lundqvist
筧雄介
嶋田幸久
Venkatasubbu Thirulogachandar
Twan Rutten
Ravi Koppolu
Thorsten Schnurbusch
鈴木孝子
Kelly Houston
William T. B. Thomas
Robbie Waugh
発行年度 2017
要約 deficiensと呼ばれるオオムギは、通常の二条大麦に比べ種子が大きく千粒重が10%程度増加する。deficiensでは、転写因子VRS1タンパク質のカルボキシル末端領域にアミノ酸置換をもたらす変異が存在し、DNAマーカーとして利用することで穀粒サイズを大粒化することが可能となる。
キーワード 子実収量、突然変異、DNAマーカー、ゲノム
背景・ねらい オオムギは主要穀物の一つで、穂の形によって二条オオムギと六条オオムギに分けることができる。二条オオムギはビール醸造用として、六条オオムギは食品や飼料に利用されている。二条と六条の違いは、転写因子をコードするVrs1遺伝子によって制御されており、Vrs1遺伝子が側列小花の発達を抑制して種子を作らない品種が二条、Vrs1遺伝子の機能が失われ側列小花が発達して種子を作る品種が六条である。近年イギリスでは、側列小花が通常の二条より極端に小さいdeficiensと呼ばれるオオムギ(図1)が優先的に育種されているが、側列小花が小さく粒が大きい原因は明らかではなかった。本成果は、deficiensの原因遺伝子を同定し種子の大粒化との関係を定量的に明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 分子遺伝学的解析の結果、deficiensオオムギのVrs1遺伝子にコードされるHD-ZIP I型転写因子の一つであるVRS1タンパク質のカルボキシル末端領域の184位のアミノ酸、セリン(S)がグリシン(G)へ、あるいは187位のアミノ酸、セリン(S)がプロリン(P)へと変異することによって、deficiensに特徴的な穂の形すなわち側列小花の極端な小型化がもたらされる(図2)。
  2. deficiensのVRS1タンパク質で置換されたアミノ酸の部位は、普通の二条型ではリン酸化を受けやすい部位であることから、deficiensに見られるアミノ酸置換によりリン酸化を受けにくくなることによって、VRS1タンパク質の分解が制限され、寿命が長くなり、側列小花の発達をより強く抑制するものと推測される。
  3. deficiensでは、通常の二条型に比べて種子サイズが大きいと言われて来たが、それを裏付ける具体的データはこれまでなかった。今回の形質調査により、deficiens品種では穀粒サイズが大きくなり、それによって千粒重が10%程度増加することを初めて明らかにした(図3)。なお、deficiensのVrs1遺伝子の変異は、他の収量形質に悪影響を及ぼさない(図3)。
  4. トランスクリプトーム解析によって、deficiensオオムギの穂では細胞分裂の活性化に関与するヒストンファミリー遺伝子の発現が上昇していることが判る。
成果の活用面・留意点
  1. deficiensが大粒化をもたらすことはこれまで全く報告がなく、本研究によってdeficiensオオムギのもつVrs1遺伝子を交配により導入する、あるいは突然変異により誘発することにより、オオムギ穀粒サイズを大粒化することが可能になる。
  2. 特定したdeficiens遺伝子のDNA変異は、育種家にとって画期的なDNAマーカーであり、これを利用した確実な選抜によって粒サイズを制御し目的に応じたオオムギ品種を育成することが可能となる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029421
カテゴリ 育種 大麦 DNAマーカー 品種

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