デュラムコムギのゲノムからみる小穂非脱落性の進化

タイトル デュラムコムギのゲノムからみる小穂非脱落性の進化
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究課題名
研究期間 2014~2017
研究担当者 小松田隆夫
Raz Avni
Assaf Distelfeld
発行年度 2017
要約 デュラムコムギの祖先、野生エンマーコムギのゲノム配列解析により同定された遺伝子をデュラムコムギの遺伝子と比較することで、野生コムギから栽培コムギへの遺伝的進化が判る。例えば、デュラムコムギは、収穫上有利な穂が落ちにくい原因となる小穂非脱落性遺伝子に、野生コムギにはない機能喪失型の突然変異を持つ。
キーワード デュラムコムギ、野生エンマーコムギ、ゲノムアッセンブリー、小穂非脱落性、栽培起源
背景・ねらい パスタの原料、デュラムコムギのゲノム基盤整備を目指し、デュラムコムギの塩基配列情報や遺伝子発現情報を明らかにして共通基盤として育種に利用できるよう整備する。またゲノム情報から重要農業形質を支配する遺伝子の代表として小穂非脱落性遺伝子を抽出し、野生エンマーコムギから栽培デュラムコムギへの分子進化を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 栽培デュラムコムギとその祖先である野生エンマーコムギはいずれも染色体が2n=4x=28の異質四倍体でAABBゲノムをもつ。野生エンマーコムギの系統Zavitanから、全ゲノムショットガン法により、全ゲノム配列解析を行い、遺伝学的データ並びに3次元(HiC)により結合して作成されたゲノムアッセンブリーは10.5Gbである。
  2. 異なる植物器官および組織(総計20部位)における遺伝子発現解析をおこない、信頼性の高い65,012の遺伝子が同定され、この数は全遺伝子の98.4%に相当する(図1)。
  3. 栽培化された穀物は、祖先野生種と異なり成熟後も種子が自然には落ちない特徴をもち、これは収穫する上での利点でもある。しかし本来、成熟した種子の脱落は植物が拡散し生息域を広げるために重要な形質である。デュラムコムギの小穂非脱落性遺伝子Tt Btr1-ATt Btr1-Bを解析したところ、二つの遺伝子ともに機能を喪失するタイプの突然変異を生じており、デュラムコムギの小穂非脱落性は、長年の栽培により獲得された形質であることが判る(図2A)。
  4. Tt Btr1-ATt Btr1-Bのいずれか一方の遺伝子が機能型であれば、その植物の穂は部分的な小穂脱落性を示す(図2B)。考古学的知見からコムギの栽培化はそれまで考えられていたよりも長い時間がかかったことが最近10年ほどの研究が示唆しているが、本研究の結果はこの知見と一致する。
成果の活用面・留意点
  1. ゲノム塩基配列情報や遺伝子発現情報などのコムギ育種、特にデュラムコムギ(パスタコムギ)育種で活用される。
  2. 四倍性コムギの分類、進化、遺伝資源の効率的な保存に活用される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029419
カテゴリ 育種 遺伝資源 せんぶり

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