大型海産魚類における低コスト受精卵供給技術の開発:ブリの成熟に及ぼす制限給餌の影響

タイトル 大型海産魚類における低コスト受精卵供給技術の開発:ブリの成熟に及ぼす制限給餌の影響
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 西海区水産研究所
研究課題名
研究期間 2012
研究担当者 樋口健太郎
玄 浩一郎
高志利宣
虫明敬一
吉田一範
発行年度 2017
要約 マグロやブリ等の大型養殖魚では、受精卵の採取を目的とした親魚養成に膨大な餌料費が必要となるため、そのコスト削減が強く望まれている。本研究では、親魚の卵形成過程の各時期に給餌量を制限することで、成熟期では卵形成の進行が抑制される一方、それ以外の時期では影響がないことをブリで初めて明らかにした。これら知見は、今後、親魚養成の低コスト化を進めるうえで基礎的知見となりうる。
背景・ねらい クロマグロやブリなどの大型養殖魚の親魚養成には膨大な餌料費がかかるため、少ない餌で効率よく良質卵を産ませる技術の開発が強く望まれている。しかし、給餌量の削減がこれら多回産卵型の大型養殖魚の成熟・産卵に及ぼす影響についてはほとんどわかっていない。本研究では、ブリを用いて、卵形成が進行する成熟期ならびにその直前の成熟開始前に制限給餌を行い、これらの制限給餌が成熟に及ぼす影響を調べた。
成果の内容・特徴 ブリ2歳魚を海面生簀内で産卵終了後(7月)から翌年の産卵(4月)まで飼育し、以下の3試験区を設けた飼育試験を行った:(1)飽食給餌区、(2)成熟開始前(11~1月)に飽食給餌区の30%量の給餌を行う試験区(成熟開始前制限給餌区)、(3)成熟期(2~4月)に飽食給餌区の30%量の給餌を行う試験区(成熟期制限給餌区)。試験期間を通して、試験区間に尾叉長の違いは認められなかったが、両制限給餌区の体重ならびに肥満度は、それぞれ制限給餌を行った期間において増加が認められず、試験終了時には飽食給餌区と比較して低くなる傾向が認められた(図1)。制限給餌が成熟に及ぼす影響を明らかにするため、4月の卵巣重量ならびに最大卵巣卵群の卵径を調べたところ、成熟期制限給餌区のみで卵巣重量ならびに最大卵巣卵群の卵径ともに低くなった(図2、3)。また、血中エストラジオール-17β濃度を経時的に調べたところ、11月ならびに1月では試験区間で差が認められなかったものの、4月では成熟期制限給餌区のみで有意に低い値を示した(図4)。以上から、成熟期の給餌量はブリの成熟の進行に極めて重要であることが明らかになった。
成果の活用面・留意点 (1)魚類の成熟の進行はある限られた期間の摂餌量に強く影響を受けることが知られている。本研究の結果から、ブリの成熟は卵形成が進行する成熟期の摂餌量に依存して進行することが明らかになった。したがって、本成果を応用し、成熟開始前に給餌量の削減を行うことで、成熟の進行に影響を及ぼすことなく、効率的に良質卵を産ませることが可能になると期待される。

(2)ブリの分離浮遊卵を年多回産卵する繁殖特性は、クロマグロ等の多くの大型養殖魚と共通していることから、本成果はブリと同じ繁殖特性を有する他の魚種にも十分に応用可能であると考えられる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029408
カテゴリ コスト 低コスト 繁殖性改善

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