タイトル |
害虫抵抗性誘導物質としてのロリオライドの発見と害虫に対するその防除効果 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究課題名 |
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研究期間 |
2008~2016 |
研究担当者 |
瀬尾茂美
村田未果
中井勇介
河津圭
石坂眞澄
梶原英之
光原一朗
望月淳
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発行年度 |
2017 |
要約 |
カロテノイドの一種であるロリオライドに殺虫活性はないが、これをトマトに前処理するとナミハダニやハスモンヨトウの生存率や産卵数が低下する。
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キーワード |
抵抗性誘導、カロテノイド、害虫防除、ロリオライド
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背景・ねらい |
植物に施用すると全身的な抵抗性を誘導し、多様な病原体に対して長期間病害防除効果を発揮する抵抗性誘導剤が、環境調和型農薬として注目されている。しかし、現在上市されている抵抗性誘導剤は病原菌が防除対象であり、害虫に対して有効な誘導剤は知られていない。害虫抵抗性遺伝子の発現が増強された植物から害虫抵抗性誘導物質を探索し、その防除効果を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 植物病原ウイルスの感染に伴い害虫抵抗性遺伝子の発現が増強されたタバコ葉の特定の混合比からなる混合有機溶媒で抽出される画分には、トマトにおけるナミハダニ産卵数を低下させる活性が存在する(図1左)。
- 当該活性の本体はカロテノイド代謝産物であるロリオライドである(図1右)。
- ロリオライド溶液中に24時間浸漬処理したトマト葉でナミハダニ雌成虫を5日間飼育すると、ロリオライド濃度が100μMで産卵数が低下し、500μMで生存率が低下する(図2)。
- 同様にハスモンヨトウ孵化幼虫を飼育すると、ロリオライド濃度が10μMで生存率が低下する(図3)。
- ロリオライドはナミハダニとハスモンヨトウに対する殺虫活性は示さないことから、害虫抵抗性誘導物質と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 害虫に対して有効な抵抗性誘導剤が上市されていない理由の一つは、その素材となる害虫抵抗性誘導物質の見出された数が少ないからである。ロリオライドは害虫抵抗性誘導剤の素材になり得る可能性がある。
- ロリオライドは吸汁型のナミハダニ及び咀嚼型のハスモンヨトウといった異なる摂食様式の害虫に対して防除効果を示すことから、他の害虫に対しても効果がある可能性がある。
- ロリオライドは市販されていないため、植物等から抽出するか、カロテンなどから合成する必要がある。カロテンの1種であるルテインを出発材料として合成する場合、10mgのロリオライドの合成にかかる費用は約5万円である。
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カテゴリ |
害虫
たばこ
抵抗性
抵抗性遺伝子
トマト
農薬
防除
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