熊本地震の被害事例からみた温室とその附帯施設の破壊パターンと対策

タイトル 熊本地震の被害事例からみた温室とその附帯施設の破壊パターンと対策
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究課題名
研究期間 2016~2017
研究担当者 森山英樹
奥島里美
石井雅久
土屋遼太
発行年度 2017
要約 一般建築物と比べて軽量構造物である温室では、屋根構造の有害な変形は限定的である。環境制御機器が正常に作動することが、営農継続の可否の判断基準となる。基礎の不規則な変位に対しては、変形を許容する構造が有効である。
キーワード 基礎の不規則な変位、柱の傾斜、地割れ、液状化、地震による揺れ
背景・ねらい 2016年4月に発生した平成28年(2016年)熊本地震によって、熊本県を中心に温室およびその附帯施設が被災した。震度5強~6強を記録した被災地の温室を現地調査した結果から、地震によって破壊が集中する温室部位、復旧可否の判定基準、附帯施設も含めた今後の地震対策を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 熊本地震による温室の主な被災原因は、地盤変状および地震の揺れである。地盤変状は地割れおよび液状化であり、これらは温室基礎を不規則に移動させる。地割れの場合、基礎は主として水平方向に移動する(図1)ため震災後の基礎の原位置復旧が困難である。一方、液状化の場合は基礎の沈下が卓越し、谷樋勾配の乱れや栽培ベンチの変形を引き起こす(図2)。基礎の沈下であれば、基礎および柱のジャッキアップや、基礎の沈下深さ相当の柱延長部材の追加等で原位置復旧できる。ただし谷樋勾配の復元は困難であるため、谷樋途中から室内への水の流下を検討する。
  2. 地震の揺れによる被害は、フェンロー型等の大規模温室で顕著である(図1)。柱は間口方向、桁行方向、もしくはその両方に傾斜する。条件が悪ければ、間口方向に5度以上の傾斜を生じることがある。桁行方向の傾斜の場合は、筋交い(柱間ブレース)の脱落を伴うことが多い。地震の揺れは吊り下げ型の循環扇等の附帯施設にも被害を及ぼす。
  3. 地震力による温室構造の傾斜は、柱に集中することが多く。屋根部における有害な変形は少ない(図1および図3)。天窓および移動式カーテンの作動に重大な支障が生じることが少ない。温室構造が安全に保たれていれば、これらの環境制御機器の正常な作動が、温室使用可否の判断材料の一つとなる。
  4. 栽培ベンチも、液状化および地震の揺れによって破壊される。ベンチ内の湛水レベルは高精度に調整する必要があり、液状化による変形の修復は困難である。地震力に対しては、脆弱な構造のものが散見される。図4の事例では、ベンチ柱脚部の許容応力度は235N/mm2である。それに対して地震力によって生じる引っ張り応力は669N/mm2であり、許容応力度を大きく超過する。栽培ベンチは作業者の作業動線に近接しているため、柱脚間に筋交いを増加し、転倒の危険を減少させる。
  5. 地震発生率の高い地域(地域係数1.0)の軟弱地盤(地盤に関する係数1.3)に建設されているパイプハウス(間口6m、棟高3.16m、奥行50m、アーチパイプφ25.4×1.2mm、パイプスパン50cm、被覆材0.15mm厚さの農ビ)のアーチパイプ一組に作用する水平力は25.4Nに過ぎない。熊本地震でも、地震動のみによって破壊されたパイプハウス事例は報告されていない。さらに地盤変状にも比較的追随しやすい、変形を許容する温室であるため、地震に関して不利な立地条件ではパイプハウスは地震対策の有力な選択肢である。
成果の活用面・留意点
  1. 被災パターンに応じた地震対策をとることで、合理的な補強、復旧が可能になる。
  2. 大規模温室の場合、地盤変状に対しては一般建築物と同様、抜本的な対策はないのが現状であり、できるだけその可能性のある土地を回避して温室を建設する。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029340
カテゴリ 環境制御 傾斜地

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