タイトル | 長期的な気象・海況変化に伴う仙台湾におけるイカナゴの資源状況 |
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担当機関 | 宮城県水産技術総合センター |
研究課題名 | |
研究期間 | 2011 |
研究担当者 |
佐伯光広 稲田真 小野寺毅 永木利幸 |
発行年度 | 2017 |
要約 | イカナゴ当歳魚と成魚の漁獲量と資源状況を気象・海洋環境のモニタリング調査結果を基に検討した。成魚の分布密度は、沖合底曳網が操業を自粛した1990年以降、一時的に増加したが、2004年以降、再び減少傾向となり、過去の最低水準まで低下した年も現れた。資源量の低下は当歳魚の加入の不調が主な原因であり、気温の上昇に大きな影響を受ける沿岸生息域海水温の上昇が関係していると考えられた。 |
背景・ねらい | 減少傾向が顕著となっている仙台湾のイカナゴ資源の変動要因について、気象・海洋環境データとの関係から考察し、今後の動向について推定する。 |
成果の内容・特徴 | 当歳魚を対象とする火光利用敷網漁業の漁獲量は、2002年以降5,000トンを超える漁獲量は3ヵ年だけであり、不漁年が頻発するようになった。成魚を対象とするすくい網漁業は、沖合底曳網漁業が操業を自粛した1990年以降もほとんどの年が1,000トン台と横ばいとなっていた(図1)。
成魚の夏眠期の分布密度は、沖合底曳網漁業が操業を自粛した1990年以降、一時的に増加したが、2004年以降、減少傾向が顕著となり、沖合底曳網漁業の影響があった年と同等の最低水準まで低下した年も現れた。2011年の東日本大震災から2013年にかけて、漁獲努力量の減少により一時的に増加したが、2014年以降は再び減少傾向となった(図2)。 夏眠期分布密度の低下は当歳魚加入の不調が主な原因と考えられ、ボンゴネットによる1月の仔魚分布密度と当歳魚の漁獲量は正の相関関係にあり、特に2010年以降の不漁年における両者の関係は、単回帰直線によく適合していた(図3)。 当歳魚漁獲量と仙台湾の10m、20m、30m水深の水温の関係を調べた結果、漁獲年の1月、3月及び前年11月の水温が低いと当歳魚漁獲量が多くなる傾向を示した(表1)。1月、3月、11月ともに仙台湾の各水深層の平均水温は海洋観測前月気温もしくは海洋観測当月気温と高い有意な正の相関を示し(表2)、気温が海水温に影響を与えることを示唆した。このことから当歳魚加入量の減少要因として、気温の上昇に大きな影響を受ける沿岸生息域海水温の上昇が考えられた。 海洋環境の変化は、浮魚類の定置網の漁獲期間の長期化や、サワラ、アカムツ、ガザミ等の暖水性種が多獲される状況からも示された。 |
成果の活用面・留意点 | 今後、海洋環境の変動とイカナゴの資源変動、及び水揚げされる魚種組成の変動に留意し、海洋環境の温暖化に対応したイカナゴの資源管理や漁業の在り方を検討する必要ある。 |
カテゴリ | 環境データ モニタリング |