キクの花弁におけるクロロフィルの蓄積機構

タイトル キクの花弁におけるクロロフィルの蓄積機構
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門
研究課題名
研究期間 2013~2017
研究担当者 大宮あけみ
佐々木克友
奈島賢児
小田(山溝)千尋
平島真澄
住友克彦
発行年度 2017
要約 キクの花弁では低い生合成活性と高い分解活性により、葉よりもクロロフィル量が少ない状態が作られている。緑色花弁では白色花弁よりもクロロフィル蓄積量が多いが、この要因の一つとして、生合成活性が高いことがあげられる。
キーワード キク、花色、緑色花、クロロフィル、遺伝子発現
背景・ねらい クロロフィルは光合成において重要な役割を果たす化合物で、葉や茎などの緑色組織には多量に蓄積している。一方、花弁では鮮やかな花色を発現するためにクロロフィルを貯めないしくみが働いている。しかし、葉と花弁においてクロロフィルの蓄積量の違いをもたらすメカニズムに関して科学的な知見は乏しい。近年、キクやカーネーション、トルコギキョウなどの主要花きを中心に、花弁にクロロフィルを蓄積している緑花品種が多数育種されるようになった。本研究では、花弁におけるクロロフィルの蓄積制御機構を明らかにすることで効率的な緑花育種技術の開発に資することを目的とし、クロロフィル含量の異なるキクの緑花花弁(少量)、白花花弁(極微量)、葉(多量)を用い、これらの組織におけるクロロフィル関連遺伝子の発現を比較する。
成果の内容・特徴
  1. キクの白花品種「フィーリングホワイト(FW)」の花弁では、発達過程でクロロフィルが減少するのに対し、緑花品種「フィーリンググリーン(FG)」の花弁では発達の初期(S1)の段階のクロロフィル量が後期(S3)まで維持される傾向にある(図1)。なお、葉におけるクロロフィル量はFGのS3の花弁と比較して約13倍である。
  2. マイクロアレイ解析を行った結果、クロロフィル生合成酵素遺伝子の発現の多くは、FWの花弁で低く、FGの花弁および葉において高い傾向にある(図2)。特にglutamyl-tRNA reductase(HEMA1)、protochlorophyllide oxidoreductase C(PORC)、Mg-protoporphyrin IX chelatase(CHLH)およびMg-protoporphyrin IX monomethylester cyclase(CRD)の発現量はクロロフィルの量と正の相関を示す。
  3. クロロフィル分解酵素遺伝子の中で、鍵酵素であるSTAY-GREEN 1および2(SGR1/2,Mg-dechelatase)の発現は葉における発現が花弁よりも顕著に低い(図2)。
  4. リアルタイムPCRにより、白花6品種及び緑花5品種の花弁におけるクロロフィル代謝酵素遺伝子の発現量を比較した結果、HEMA1PORCCHLHおよびCRDの発現は緑色花弁で高く白色花弁で低い傾向にある(図3)。特にCRDの発現は白色花弁で顕著に低い。一方、SGR1/2の発現は品種間の差はあるものの、花色による発現量の違いは認められない。
  5. 以上の結果から、キクの花弁では低い生合成活性と高い分解活性のバランスにより、葉よりもクロロフィル量が少ない状態が作られていると考えられる。また、緑色花弁では白色花弁よりも生合成活性が高いことがクロロフィルを多く蓄積している要因の一つである。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、効率的な緑花育種技術や安定的花色発現技術の開発のための基礎的知見となる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029251
カテゴリ 育種 カーネーション きく トルコギキョウ 品種

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