イネのアンモニア態窒素の吸収を向上させる遺伝子

タイトル イネのアンモニア態窒素の吸収を向上させる遺伝子
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2013~2020
研究担当者 小原 実広
Beier Marcel Pascal
早川 俊彦
発行年度 2017
要約 水田環境でアンモニア態窒素濃度が上昇すると、イネの根による窒素吸収能力は低下する。アンモニア態窒素吸収能力を調整する遺伝子OsACTPK1を同定した。 OsACTPK1の機能が失われたactpk1変異体では、アンモニア態窒素の吸収が向上する。
キーワード アンモニア態窒素吸収, イネ, 高親和的アンモニウム輸送
背景・ねらい 窒素は作物の生育や生産性を大きく左右する最も重要な栄養素である。水田においてイネが主として利用するアンモニア態窒素は、「高親和的アンモニウム輸送 (HAT) 機構」と呼ばれるしくみによって吸収されている。水田のアンモニア態窒素濃度が少しでも上昇すると、イネのHAT機構による窒素吸収能力は徐々に低下する。水田で生育しているイネのHAT機構を高く維持させることができれば、イネはより多くの窒素を吸収できる可能性がある。そこで、イネのHAT機構の調節に関わる遺伝子を同定し、HAT機構の能力を維持できる遺伝子を単離することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. HAT機構の調節に関わる遺伝子の候補であるOsACTPK1遺伝子は、アンモニア態窒素(NH4+-N)濃度の増加にともない根での発現が増加する(表1)。
  2. OsACTPK1遺伝子にトランスポゾンTos17が挿入されOsACTPK1の機能が失われれたactpl1変異体を得た。水田で起こり得るほぼ最大のアンモニア態窒素濃度1,000 mM(18 ppm)条件では、actpk1変異体は、対照(水稲品種「日本晴」)に比べHAT機構のアンモニア態窒素吸収の最大能力を示すVmax値が約2倍であり(図1A)、HAT機構のアンモニア態窒素に対する反応性を示すKm値は対照と同程度である(図1B)。
  3. actpk1変異体によるアンモニア態窒素の吸収量は、アンモニア態窒素濃度5 mM区では対照と同程度であるが、1,000 mM区では対照に比べ32%増加する(図2A)。
  4. actpk1変異体における最も長い根(最長根)の長さは、アンモニア態窒素濃度5 mM区では対照と同程度であるが、1,000 mM区では対照に比べ22%短くなる(図2B)。actpk1変異体の根では窒素の蓄積量が多くなるために、根の伸長にフィードバックがかかり、最長根の長さが抑制されると考えられる。
  5. OsACTPK1遺伝子はHAT機構の調節に関わる遺伝子であり、OsACTPK1の機能が失われたactpk1変異遺伝子は、HAT機構の能力を高く維持させることができる(図1、図2)。
成果の活用面・留意点
  1. actpk1変異遺伝子は、アンモニア態窒素が存在する水田環境でも、窒素の吸収を向上させることから、窒素肥料の利用効率を向上させる遺伝的改良の遺伝子源として利用できる。
  2. 育種素材開発において、最長根長の低下は、HAT機構の能力を高く維持していることの表現型マーカーとして用いることができる。
  3. OsACTPK1は、植物体内に多く蓄積すると毒性を示すアンモニア態窒素を吸収しすぎないブレーキとしての調節機能を持つことから、actpk1変異遺伝子はイネの生育に何らかの影響を与えることが懸念される。様々な水田環境におけるactpk1変異体の窒素吸収と生産性を検証し、窒素吸収と生産性におけるactpk1変異遺伝子の利点と欠点を明らかにする必要がある。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b05
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029175
カテゴリ 育種 水田 水稲 品種 輸送

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