タイトル |
極晩熟期で茎葉乾物収量が高いイネWCS新品種「つきことか」 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究課題名 |
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研究期間 |
2005~2017 |
研究担当者 |
中込弘二
出田収
重宗明子
松下景
石井卓朗
春原嘉弘
前田英郎
飯田修一
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発行年度 |
2017 |
要約 |
「つきことか」は温暖地西部において"極晩"熟期に属する水稲粳種で、極長稈で茎葉乾物収量が極めて高いイネWCS用品種である。晩植でも穂重割合が小さいため、茎葉重割合が高いイネWCSの生産が可能である。
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キーワード |
イネ、稲発酵粗飼料、WCS、縞葉枯病抵抗性、極晩生
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背景・ねらい |
イネWCS(稲発酵粗飼料)用品種「たちすずか」は、耐倒伏性に優れ、牛に消化されやすい茎葉の割合が高く、サイレージ発酵に必要な糖の含有率が高いことから、主に関東以西で普及が進んでいる。しかし、「たちすずか」は麦跡などの晩植栽培で穂重割合が高くなる事例があり、晩植栽培でも穂重割合が低い茎葉多収品種が求められている。一方で、長稈対応型の収穫機を導入するコントラクターが徐々に増えてきており、より多収である長稈品種を望む声も全国各地から上がっている。そこで、「たちすずか」より生育期間が長く、茎葉収量が高いイネWCS専用品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「つきことか」は、「ホシアオバ」の突然変異処理により選抜された極短穂系統「05多予II-15」を母本、長稈で全重が多収である「中国飼189号」を父本とする交配後代より育成した品種である(表1)。
- 出穂期は9月23日頃で、"かなり晩"熟期の「たちすずか」より2~3週間程度遅い"極晩"である(表1)。出穂特性の感光性程度は強く、移植時期の変動による出穂期の変動が小さい(表1)。
- 稈長は「たちすずか」より14~19cm程度長い"極長"で、穂長は「たちすずか」より短い。穂数は普通期移植栽培では「たちすずか」並で、晩期移植栽培ではやや少ない(表1、写真1)。耐倒伏性は"やや強"である。
- いもち病に対しては、系譜および接種検定の結果から真性抵抗性遺伝子Pib、Pik-m、Pi20を持つと推定されるが、その他の遺伝子の有無は不明であり、圃場抵抗性は葉いもちが"弱"、穂いもちは不明である(表1)。縞葉枯病に抵抗性であり、白葉枯病抵抗性は"強"である(表1)。
- 多肥・普通期移植栽培における地上部乾物重は「たちすずか」より19%多収であり、籾重割合は「たちすずか」より小さい1.7%と極めて茎葉多収である(表1)。稲体の糖含有率は15%程度で、良質な発酵が期待できる(表1)。
- 標肥・晩期移植栽培においても穂重割合が2.5%と低く、茎葉重割合が高い飼料を生産できる(表1)。
- 採種栽培では、極晩植と疎植を組み合わせることで300kg/10a程度の粗籾重を得られる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 栽培適地は温暖地西部・暖地の平野である。作業分散や麦跡栽培などで晩植栽培となる九州、瀬戸内沿岸、東海地域からの要望があり100ha以上の普及見込みがある。
- 耐倒伏性は"やや強"であり、極長稈で倒伏することがあるため、栽培条件に留意し、密植や極端な多肥栽培は避ける。
- いもち病については,外国品種由来とみられる抵抗性遺伝子を持つが、葉いもち圃場抵抗性が"弱"であることから、発病をみたら適切な防除を行う。
- 極晩生であるため採種栽培は、暖地などの比較的温暖な地域で行う必要がある。
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カテゴリ |
いもち病
コントラクター
栽培条件
縞葉枯病
収穫機
飼料用作物
新品種
水稲
抵抗性
抵抗性遺伝子
品種
防除
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