オオムギ精麦品質向上に効果がある破砕澱粉粒形質(fra)選抜用DNAマーカー

タイトル オオムギ精麦品質向上に効果がある破砕澱粉粒形質(fra)選抜用DNAマーカー
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究課題名
研究期間 2008~2017
研究担当者 中村俊樹
齋藤美香
田中剛
佐藤和広
発行年度 2017
要約 主食用オオムギ精麦品質向上に寄与する硝子質粒低減に有効な破砕澱粉粒形質(fra)は、HvFLO6遺伝子に生じた1塩基置換が原因である。同変異情報を利用して作成された共優性マーカーは、胚乳fra形質の効率的な選抜に利用できる。
キーワード オオムギ、硝子率、破砕澱粉粒変異、fra、DNAマーカー
背景・ねらい 主食用オオムギにおいて品質ランク区分を決定する項目の一つに硝子率がある。硝子率が基準値を超えると生産物価格の低下につながることから、硝子質粒になりにくい品種の育成が求められている。その対策の一つとして、胚乳が粉状質になる破砕澱粉粒変異(fra)形質の導入が進められている。同形質の正確な評価には顕微鏡観察が必要であり、また劣性変異であるために野生型とヘテロ接合型の識別ができないことから、効率的な選抜手法としてDNAマーカーによる選抜が求められている。そこで、本研究ではfra形質の原因遺伝子を同定すると同時に、事業育種に利用可能な原因遺伝子由来の共優性型のDNAマーカー開発を行う。
成果の内容・特徴
  1. 通常大粒、小粒からなるオオムギ胚乳澱粉(図1a)が、fra変異体「Franubet」においては砕けて細粒化(図1b)し、その結果胚乳組織が粉状質になる。この形質は、1遺伝子支配の劣性変異であり、その原因遺伝子は第4染色体短腕に座乗する。
  2. fra原因遺伝子は、イネにおいてイソアミラーゼと澱粉の間を架橋する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子Floury 6 (FLO6)の同祖遺伝子(HvFLO6とする)である。
  3. 同タンパク質(HvFLO6)は、532アミノ酸からなり、N末に葉緑体やアミロプラストへ移行する場合に必要なシグナル配列を、C末に澱粉等炭水化物に結合するドメイン配列(Carbohydrate Binding Module 48:CBM)を持つ(図2)。
  4. 「Franubet」のHvFLO6遺伝子においては、第6エキソン中に生じた1塩基置換(SNP)により396番目のアミノ酸がトリプトファンから終止コドンに変化している。これによりタンパク質の合成が阻害されることがfra変異の原因である(図2)。
  5. 上記SNP部位配列を利用した3個のプライマーセット(図3a)を用いTemperature-Switch PCR(図3b)を行うことで、野生型からは430bpの、fra型からは365bpの増幅物が得られる(図3c)。
  6. 上記マーカー(TARCHv0014)は、野生型、fra型に加えてヘテロ接合型の系統の識別も可能である共優性マーカーである(図3c)。
  7. 既に全国の大麦育種現場においてfra導入系統選抜に利用されている。
成果の活用面・留意点
  1. 今回利用したfra形質は、「Franubet」に由来する形質であることから、開発したマーカーは同系統に由来する派生系統の選抜のみに利用できる。
  2. 3プライマーのPCR反応液中の最終濃度を、fra-LSP-F:0.2μM、fra-LSP-R:0.2μM、fra-ASP:0.5μMとする。
  3. 1塩基多型箇所を認識するプライマーを用いるため、3 ?→5 ?エキソヌクレアーゼ活性を持たないPCR用酵素を使用する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029096
カテゴリ 育種 大麦 DNAマーカー 品種

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