新たな無花粉スギ品種の開発と今後の品種改良を促進するDNA マーカーの開発

タイトル 新たな無花粉スギ品種の開発と今後の品種改良を促進するDNA マーカーの開発
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 大平 峰子
三嶋 賢太郎
坪村 美代子
平岡 裕一郎
加藤 一隆
高橋 誠
星 比呂志
平尾 知士
栗田 学
渡辺 敦史
発行年度 2017
要約 初期成長に優れた新たな無花粉スギ品種「林育不稔1号」を開発しました。また、今後の無花粉スギの品種改良の促進につながる、高い精度で無花粉遺伝子を検出できるDNAマーカーを開発しました。
要約(英語)  
背景・ねらい 無花粉スギ品種「爽春」と精英樹を交配して品種改良を行い、精英樹と同じかそれ以上の初期成長を示す新たな無花粉スギ品種「林育不稔1号」を開発しました。また、「爽春」と精英樹を交配した苗木の集団で、花粉形成の有無の調査と多数のDNAマーカーを用いた分析を行い、高い精度で「爽春」の無花粉遺伝子を検出できるDNAマーカーを開発しました。事業的に使えるマーカーの開発は、世界的にも先駆的な成果です。このマーカーにより、花粉を作る個体の中から、成長などの特性が優れ、かつ無花粉遺伝子を持っているヘテロ個体の探索が容易にかつ広範に行えるようになります。こうした個体を交配材料に用いることで、今後の無花粉品種の開発期間の大幅な短縮が期待できます。
成果の内容・特徴 花粉症の原因である花粉を作らないスギ
スギ花粉症は、大きな社会問題となっており、林野庁は花粉発生源対策として、花粉の少ない森林への転換を進めています。この中では、雄花をほとんどつけない少花粉スギなどの花粉症対策苗木の普及を進めています。 一方、平成4年に花粉症の原因となる花粉をまったく作らないスギが初めて発見され、無花粉スギによる品種改良も進められ、林木育種センターでは無花粉スギ品種「爽春」を開発しました(平成20年3月に品種登録)。 

初期成長が優れた新たな無花粉スギ
「爽春」は、幹の通直性やさし木発根性に優れていますが、成長は精英樹ほどではありませんでした。そこで林木育種センターでは「爽春」と精英樹を二世代にわたり交配して品種改良を行い、初期成長が精英樹と同等またはそれ以上の新たな無花粉スギ品種「林育不稔1号」を 開発しました(図1、図2)。植栽後6年で精英樹は樹高の遺伝的な推定値が6.7mであるのに対し、「林育不稔1号」は6.6m(精英樹に対し98%)、さし木で育成した苗木では定植後3年で精英樹の樹高の推定値が2.2mに対し、「林育不稔1号」は2.5m(114%)で、精英樹と同等またはそれ以上の初期成長を示します。また、幹の通直性や材質も、これまでの調査の結果、精英樹と同等です。

新たな無花粉スギの開発にはヘテロのスギが重要
成長のよい無花粉スギを開発するには、「爽春」を改良して「林育不稔1号」を開発した場合のように、二世代にわたる交配が必要で、長い時間がかかります。もし、優良なヘテロ個体(無花粉遺伝子は持つが花粉は着ける個体)が準備できれば、一世代の交配での品種開発が可能となり、品種改良が効率的になります。しかし、ヘテロ個体は普通のスギと同様に花粉を作るため、これまでその判定には人工交配が必要でした。そのため、ヘテロ個体の探索には大変な手間と時間がかかり、簡単には利用できませんでした。

「爽春」の無花粉遺伝子を高い精度で判定できる DNA マーカー
「爽春」と精英樹を交配したスギ苗木の集団で、花粉形成の有無の調査と多数のDNAマーカーを用いた分析を行った結果、「爽春」の無花粉遺伝子を高い精度で検出できるDNAマーカーの開発に成功しました(図3)。事業的に活用可能なマーカー開発は、世界的にも先駆的な成果です。このマーカーを用いて精英樹の中からヘテロ個体を探索し、実際にヘテロの精英樹を3クローンみつけることができました。今後これらのヘテロの精英樹を「林育不稔1号」等と交配することにより、無花粉スギの品種開発を加速することが可能になりました(図4)。また、交配した個々の個体が無花粉かどうかの判定も、着花前にDNAマーカーで容易にできます。これらにより、育種期間を大幅に短縮することができます。

研究資金と課題
本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「農林水産分野における気候変動対応のための研究開発」のうち「気候変動に適応した花粉発生源対策スギの作出技術開発」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029078
カテゴリ 育種 気候変動対策 栽培技術 DNAマーカー 品種 品種開発 品種改良

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