センサーネットワークによる森林のCO2吸収量の高精度観測と長期モニタリングデータの活用

タイトル センサーネットワークによる森林のCO2吸収量の高精度観測と長期モニタリングデータの活用
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 山野井 克己
溝口 康子
安田 幸生
高梨 聡
深山 貴文
小南 裕志
北村 兼三
発行年度 2017
要約 森林のCO2吸収量を観測するシステムをセンサーネットワーク化することにより、観測の精度向上と省力化を図り、長期モニタリングを可能にしました。長期データにより、CO2吸収量の詳細な変動が明らかになってきました。
背景・ねらい 気候変動の将来予測には自然環境の長期モニタリングが重要です。森林総合研究所では、日本各地の森林に気象観測用タワーを設置してCO2吸収量を高精度で測定しています。これらのタワーに設置した観測システムを、インターネットを活用してセンサーネットワーク化することにより、遠距離にある研究所から観測データを常時モニタリングできるようにしました。これにより欠測の少ない高精度な観測を維持できるようになり、また観測を省力化することで長期モニタリングを可能にしました。さらに観測からデータ公開までの処理も早めることができました。長期モニタリングにより、年ごとの気象条件の違いや突発的に発生した森林被害がCO2吸収量に大きく影響することなどが明らかになってきました。
成果の内容・特徴 森林のCO2吸収量を測定するための観測ネットワーク
森林がどのようにCO2を吸収・放出しているかを明らかにするために、森林総合研究所では、国内の森林5 ヶ所に気象観測用のタワーを設置し、森林のCO2吸収量を高精度に測定しています(図1)。タワーでは気象学的な方法を用いて連続してCO2吸収量を測定しており、1日の中でのCO2吸収量の変化から年ごとのCO2吸収量の違いまで、様々な時間スケールでの変化を高い精度でとらえることができます。日本各地の森林を対象に、1999年に開始された観測は、すでに17年の蓄積があります。これまでの観測データは「森林総研フラックス観測ネットワーク」のデータベースで公開されています。

センサーネットワークによる高精度なCO2吸収量の観測
タワー観測を維持するためには、定期的な機器などのメンテナンスが欠かせません。観測サイトの中には研究所から遠距離の山地にあるものもあり、メンテナンス作業のために多くの労力が必要でした。また、観測機器の動作状況を常に把握し、停電などの突然のトラブルに対応することが困難なため、欠測が発生することは避けられませんでした。 近年、通信機能を持つ観測機器の進歩は目覚ましいものがあります。山地における通信環境も大幅に向上しており、現在では全ての観測サイトでインターネットへの接続が可能となりました。ICTを活用してセンサーネットワーク化した観測サイトと研究室をつなぐことで、観測状況の常時モニタリングを実現しました(図2)。これに より、現地でのメンテナンス作業に要する時間が短縮され、作業回数も必要最小限に減らせました。研究室から観測データを直接取得できるようになり、観測・解析からデータ公開までを効率的に行うことができるようになりました。

長期モニタリングにより森林のCO2吸収量の詳細な変動が明らかに
落葉広葉樹林(札幌、安比)と常緑針葉樹林(富士吉田)のCO2吸収量(図3)には明らかな季節変化が見られ、年ごとに違いがあることが分かります。気温・日照時間・降水量などの気象条件の年による違いが、その原因となっていることが分かりました。また、長期モニタリング中には突発的な森林被害が観測されています。札幌では2004年に台風による風害が発生して、多くの樹木が倒れ ました。風倒後の森林はCO2の発生源となり、CO2吸収量の回復に長い年数がかかっています。安比では2007年に害虫(ブナアオシャチホコ)が大量発生して、ほとんどの葉が食べられたため、夏以後のCO2吸収量が大きく減少しました。このような食害は周期的に発生しますが、影響は発生年だけにとどまっていることが分かりました。森林は成長に長い年数がかかるため、さまざまな規模や頻度の被害を受けるものです。長期モニタリングは、こうした被害要因によるCO2吸収量への影響も明らかにすることができます。

研究資金と課題
本研究は、地球環境保全試験研究費(地球一括計上) 「センサーネットワーク化と自動解析化による陸域生態系の炭素循環変動把握の精緻化に関する研究」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029063
カテゴリ ICT 害虫 省力化 炭素循環 データベース モニタリング

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