森林に降る雨水が渓流にいたる道程は意外と深い

タイトル 森林に降る雨水が渓流にいたる道程は意外と深い
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 細田 育広
谷 誠
発行年度 2017
要約 古生層堆積岩流域の渓流の水量が大きく変わるのは、斜面内の水移動に表層土壌の水分だけでなく風化基岩内の地下水の変動が影響しているためであることを明らかにしました。
背景・ねらい 森林に降る雨水が林床に到達すると大部分は地中に浸透し、浸透した水はやがて渓流に流出します。渓流が降雨時に増水する程度や降雨後に減水する速さは地質によって異なりますが、そのような違いが現れる具体的な仕組みは詳しく分かっていません。この研究では、降雨時の増水には表層土壌の水分だけでなく、風化基岩内の地下水の動きが関わっていることを観測によって明らかにしました。古生層堆積岩の流域は、同じ量の雨が降っても流域が乾燥している時と湿潤な時では水の出方が大きく異なるため、流出の予測が難しいという特徴があります。この成果は、このような流域の降雨流出予測の精度向上に活用できます。
成果の内容・特徴 斜面の中の水の流れ
森林の土壌は大小さまざまな隙間を持つため、地表に届いた雨水の大部分を吸収します。地中に吸収された水は地表よりもゆっくり移動するので、降雨中および降雨後の渓流水量の増減は緩やかになります。このようにして森林は渓流への水流出を平準化していますが、こうした水の増え方や減り方は、土壌の下にある基岩の種類や状態によっても変わります。この研究では、風化層が厚く発達した古生層堆積岩を基岩とする流域を対象に、風化基岩内の地下水と渓流水量との関係を調べました。

風化基岩の状態
岡山市内にある古生層堆積岩流域を対象に、まず風化基岩の状態を調べるために斜面の中・上部2カ所でボーリング調査を行いました。その結果、この斜面では厚さ30cm程度の森林土壌の下に、最も深い部分で約16mの風化層があること、また表層に近いほど亀裂や細粒物質が多く、基岩の風化が進んでいることが分かりました(図1)。

風化基岩内の地下水位と渓流水量の関係
次に、ボーリング調査で掘った孔を利用して風化基岩内の地下水位を測定し、渓流水量や表層土壌水分とともに、降雨時の変化の様子を調べました。その結果、表層土壌が乾いている時は雨が降っても地下水位や渓流水量 の反応は小さいですが、繰り返し雨が降り表層土壌が湿ってくると、雨の度に地下水位が上昇し、同じタイミングで渓流水量も増えるようになりました(図2)。また、斜面中部の地下水位が高く上昇するほど渓流水量も大きく増加していることから、地下水が増えると斜面下方への水移動も速くなることが分かりました。

降雨流出予測の精度向上に向けた一歩
古生層堆積岩の流域は、雨の降らない日が続くと渓流の水量が大きく低下する一方、同じ量の雨が降っても流域が乾燥している時と湿潤な時では水の出方が大きく異なるため、流出の予測が難しいという特徴があります。 この研究では降雨時の渓流水量の増加に、表層土壌水分だけでなく、もっと深い位置にある風化基岩内の地下水も関わっていることを明らかにしました。今後、古生層堆積岩流域における降雨流出の予測精度の向上に向けて、さらに解析を進めます。

研究資金と課題
本研究は、JSPS科研費(JP18201036)「基岩-土壌-植生-大気連続系モデル開発による未観測山地流域の洪水渇水の変動予測」、JSPS科研費(JP23221009)「地形・土壌・植生の入れ子構造的発達をふまえた流域水流出特性の変動予測」による成果の一部です。

URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029060
カテゴリ 乾燥 くり

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