プラズマ照射による植物細胞へのタンパク質の直接導入法の開発

タイトル プラズマ照射による植物細胞へのタンパク質の直接導入法の開発
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究課題名
研究期間 2014~2016
研究担当者 柳川由紀
光原一朗
川野浩明
小林智裕
沖野晃俊
発行年度 2016
要約 二酸化炭素または窒素で生成した常温大気圧プラズマをタバコ葉に数秒照射した後、タンパク質を含む溶液に浸すことによりタンパク質を直接タバコ葉の細胞内に導入することに成功。シロイヌナズナの葉とイネの根の細胞にも同様にタンパク質を導入できる。
キーワード タンパク質導入、プラズマ、GFP、ゲノム編集
背景・ねらい 植物病原菌による寄生の成立や植物の抵抗性応答に重要なタイプIIIエフェクタータンパク質の機能解析のために、該当するタンパク質を直接細胞に取り込ませてその影響を調べるための技術開発を試みた。細胞へのタンパク質導入には、細胞膜を通過する膜透過ペプチドをタンパク質に融合させる、あるいは混合して細胞に導入するなどの方法が知られている。しかし、植物の表面はロウ状のクチクラ層に覆われているため、無傷の植物体にタンパク質をそのまま導入することは難しい。そこで、注射器を用いてタンパク質溶液を葉の内部に入れる(インフィルトレーション)、また酵素で処理して完全にクチクラ層やその下の細胞壁を除去して単細胞(プロトプラスト)にする、などといった前処理をすることでタンパク質を導入している。しかし、これらは適用できる植物の種類や組織が限られ、手法的にも困難であったため、より簡便にタンパク質を導入できる方法が求められている。
成果の内容・特徴
  1. 通常の生化学実験室の一角に設置できる規模の装置で、常温大気圧プラズマを発生させることができる。常温大気圧プラズマは、高エネルギー状態でありながら常温常圧であるため生物に直接処理しても大きなダメージを与えることはない(図1)。
  2. タンパク質導入の確認には、緑色蛍光タンパク質(sGFP) とアデニル酸シクラーゼ(CyaA)を融合させたタンパク質(sGFP-CyaAタンパク質)を用いた。このsGFP-CyaAタンパク質を含む溶液に葉を浸し、図2のように、タバコの葉に二酸化炭素ガスあるいは窒素ガスで生成させたプラズマを照射する。
  3. プラズマ照射処理した葉を共焦点顕微鏡で観察することで、二酸化炭素プラズマ、窒素プラズマどちらでもsGFPタンパク質の緑色蛍光が細胞内に観察されることから、プラズマ処理によってタンパク質を細胞に導入できることが確認できる(図3)。
  4. シロイヌナズナの葉、イネの根にも同様にプラズマ処理を行い、同様にsGFP-CyaAタンパク質の細胞内への取り込みが確認できる。これらの結果から、プラズマ処理によって、様々な植物種や組織に対してタンパク質導入が可能となることが期待される。
  5. 本法は、インフィルトレーションやプロトプラスト化などの前処理は必要なく、植物種や組織の制約もない。さらに、常温大気圧プラズマによるタンパク質導入法は膜透過ペプチドを必要としないので、サンプル調製自体も容易である。
成果の活用面・留意点
  1. 常温大気圧プラズマ法によってタンパク質などの巨大分子を直接植物細胞に取り込ませることで、タイプIIIエフェクターなどのタンパク質の機能解析を行うことができる。
  2. 転写因子を植物細胞内に導入し、目的とする遺伝子のオンオフを制御できれば、植物の機能をコントロールできる可能性がある。
  3. 植物細胞に直接タンパク質を導入してゲノム編集を行うことにより、品種改良技術の一つとして注目されるゲノム編集技術による品種改良をより加速することが期待される。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010029026
カテゴリ たばこ 抵抗性 品種改良

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