ヒト多剤耐性黄色ブドウ球菌は牛乳房感染を経て家畜感染型に変化する

タイトル ヒト多剤耐性黄色ブドウ球菌は牛乳房感染を経て家畜感染型に変化する
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究課題名
研究期間 2015
研究担当者 秦英司
発行年度 2016
要約 ヒト院内感染型多剤耐性黄色ブドウ球菌は牛乳房炎の原因になる。牛の乳房に感染感染した本菌に耐性遺伝子の脱落や家畜感染への適応が認められることから、本菌から家畜感染型の多剤耐性菌が新たに出現する可能性がある。
キーワード 多剤耐性黄色ブドウ球菌、New York/Japanクローン、牛乳房炎
背景・ねらい 近年、多剤耐性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による牛乳房炎事例が欧米を中心に報告されている。多くの牛乳房炎では、シークエンスタイプ(ST)398を示す家畜感染型MRSAが原因となるが、今回国内で遭遇した牛乳房炎事例はヒトで蔓延している院内感染型MRSAのNew York/Japanクローン(NJC)によるものであり、ヒトから感染したMRSAが牛群で蔓延する可能性がある。本研究では牛乳汁由来MRSAの遺伝学的解析によりNJCの牛での感染実態を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 本牛乳房炎事例は2005年3月より一農場で発生し、牛乳汁の全頭検査に続く感染分房の盲乳処置ならびに感染牛の計画的な隔離・淘汰により同年8月に終息している。MRSA感染牛はSA感染牛計37頭中31頭であり、うち3頭は乳房炎の臨床症状を示している。
  2. MRSA感染牛31頭から分離されたMRSA計70株はMultilocus sequence typing(MLST):ST5型、メチシリン耐性遺伝子(SCCmec):II型、を示すことからNJCである。また、Pulsed field-gel electrophoresis(PFGE)によりパルスタイプ(PT)はC2~6・C9~10の計7PTに遺伝子型別される(表)。
  3. 免疫回避遺伝子群(IEC)はヒト由来MRSAの遺伝子マーカーである。本事例において、感染初期のMRSAはIECを保有し、ヒトから牛群への持ち込みが示唆される。一方、感染後期に優勢となったPTがC4を示すMRSAではIECが脱落し、これらは家畜感染型MRSAに変化している可能性がある(表、図)。
  4. 感染分房の一部ではMRSAとメチシリン感受性SA株の遺伝子型(ST5、PT C4・C9)が一致しており、感染乳房内での耐性能の脱落(SCCmecの脱落)が推測される。SCCmecの脱落は既存の家畜感染型SAにSCCmecが伝達される可能性を意味し、新たな家畜感染型MRSA出現の危険性を示唆する(表、図)。
成果の活用面・留意点
  1. 牛乳汁の全頭検査に続く感染分房の盲乳処置ならびに感染牛の計画的な隔離・淘汰がNJC乳房感染牛の排除に有効である。
  2. ヒト由来MRSAの牛群への侵入が新たな家畜感染型MRSAの出現に関与する可能性を示す調査結果であり、生産者の衛生意識向上に寄与する知見である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028972
カテゴリ 耐性菌

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