CRISPR/Cas9を用いたキクのゲノム編集技術

タイトル CRISPR/Cas9を用いたキクのゲノム編集技術
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門
研究課題名
研究期間 2014~2016
研究担当者 佐々木克友
加星光子
間竜太郎
発行年度 2016
要約 外来遺伝子をゲノム編集の標的として利用することで、CRISPR/Cas9によるキクのゲノム編集技術が可能となる。栄養繁殖性の高次倍数性の園芸植物において、目的の形質に関与する相同的な配列を有する複数の遺伝子を改変できる新技術となる。
キーワード ゲノム編集、キク、蛍光タンパク質、腋芽、カルス、CRISPR/Cas9
背景・ねらい キクを含む多くの園芸作物では主に交配育種により新品種が作出されているが、優良系統の獲得には多数の実生からの選抜が必要となる。また、キクの高次倍数性は、変異原処理による元品種からの変異体作出や、遺伝子機能解析を目的とした変異体の作出を非常に困難にさせている。
近年、特定の遺伝子配列を標的として変異の導入を可能にする「ゲノム編集技術」が、様々な生物種で急速な発展を遂げているが、キクのようにゲノム情報に乏しく高次倍数性で栄養繁殖する園芸植物に有効な技術は開発されていない。そこで本研究では、キクにおいて標的形質のみを効率的に改良するための新しい育種技術や、遺伝子機能解析のための変異体作出技術として利用可能なゲノム編集技術の確立を目的として、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. キクは6倍体であり、さらにゲノム配列の全解読に至っていない。そのため、キクにおけるゲノム編集技術の確立には、遺伝子配列が既に報告されている蛍光タンパク質遺伝子を利用する。キクにあらかじめ導入された複数個の蛍光タンパク質遺伝子を内在遺伝子に見立てて、ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9を用いてゲノム編集を行う。
  2. CRISPR/Cas9はDNA切断を起こさせ、内在の修復機構により偶発的に変異が導入される。そのため、6倍体のキクでは、一度のゲノム編集実験操作により全ての標的遺伝子配列に対して変異を導入することは困難である。そこで、一度の操作で作出した、一部の標的遺伝子にのみ変異(図1;変異導入の例)が生じた植物体を利用する。
  3. 一部の標的遺伝子のみがゲノム編集された植物体を用いて腋芽由来植物を育成あるいはカルスを作出すると、これまで変異が未導入であった蛍光タンパク質遺伝子にも新しく変異が導入される(図2)。このようにして獲得した腋芽由来植物では、蛍光タンパク質遺伝子への変異導入が進展し、ゲノム編集前の蛍光タンパク質組換え体と比較して蛍光の低下が観察される(図3)。以上のように、キクの複数標的遺伝子への変異導入には、一部の標的遺伝子のみがゲノム編集された植物からの腋芽由来植物の育成やカルスの作出が有効である。
  4. 本成果は、ゲノム情報に乏しい栄養繁殖性の高次倍数性の園芸植物において、初のゲノム編集技術の開発である。
成果の活用面・留意点
  1. キクにおいて特定の形質のみを効率的に改良する新しい育種手法として期待される。また、ゲノム編集個体の利用により遺伝子機能の解明に役立つことが期待される。
  2. 本技術は、キク以外の高次倍数性の栄養繁殖性植物におけるゲノム編集技術の開発に有用な情報である。
  3. 高次倍数性植物には相同的な配列を有する複数の遺伝子が存在するが(6倍体の場合は、基本的には6セットの遺伝子)、その中の一部は偽遺伝子になっている可能性もあり、全ての遺伝子が機能しているとは限らない。そのため、ゲノム編集においては全ての標的遺伝子に変異が導入されなくても目的形質を示す植物が得られる可能性がある。
  4. 内在遺伝子のゲノム編集には、精度の高い遺伝子配列情報の獲得が必要であること、変異導入の検出とゲノム編集個体の獲得は倍数性が高いほど困難であることに留意する。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028937
カテゴリ 育種 きく 新品種 繁殖性改善 品種

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