黒ボク土畑への木炭施用による土壌炭素貯留効果

タイトル 黒ボク土畑への木炭施用による土壌炭素貯留効果
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2014
研究担当者 古賀伸久
下田星児
岩田幸良
発行年度 2016
要約 黒ボク土畑への40t/haまでの木炭施用は、土壌表面からの温室効果ガス発生量に影響を及ぼさない。大気中の二酸化炭素に由来する木炭中の炭素は分解しないまま土壌中に留まるため、農地への木炭施用による地球温暖化緩和効果は極めて高い。
キーワード 寒地輪作畑、黒ボク土、木炭、土壌炭素貯留、地球温暖化
背景・ねらい 気候変動に対する2020年以降の国際的な枠組みを規定した「パリ協定」が採択され、温室効果ガス排出源の一つである農業分野においても温暖化緩和に寄与する生産技術の開発が求められている。バイオマスの炭化物をバイオ炭と呼び、バイオ炭の施用が、収量増加のほか、温室効果ガスである一酸化二窒素やメタンの発生抑制、土壌炭素貯留に効果があるとする多数の報告がなされている。しかし、原料や炭化条件によって異なるバイオ炭の特性や、バイオ炭が施用される農地の土壌や気象条件によって作物や地球温暖化緩和に対する効果も様々であることが報告されている。本研究では、木炭施用が作物や温室効果ガス発生に及ぼす影響を北海道の黒ボク土輪作畑で検証し、地球温暖化緩和効果を定量的に評価する。
成果の内容・特徴
  1. 黒ボク土畑に対して40t/ha(乾物重)までの木炭(表1に原料、特性を示す)を施用しても、土壌表面からの二酸化炭素(表2)、一酸化二窒素、メタン(データ掲載なし)の4年間の積算発生量に有意な変化は見られない。
  2. 木炭施用によって、土壌表面からの二酸化炭素発生量に有意な増加が見られないことは、木炭が土壌中でほとんど分解せず、木炭由来の炭素が安定なまま土壌中に留まることを示している。木炭施用がない場合、4年間の炭素収支は負の値を示し、農地は二酸化炭素の発生源となるが、木炭施用量の増加に伴い炭素収支は正の方向に大きく増加し、土壌炭素貯留効果によって農地は二酸化炭素の吸収源となる(表2)。
  3. 木炭の施用は、トラクタによる木炭散布作業や原料の炭化工程等で化石燃料を消費するため、二酸化炭素を発生させる。しかし、土壌炭素貯留効果による土壌の二酸化炭素吸収量は、化石燃料の消費による二酸化炭素発生量を大きく上回っており、農地への木炭施用は地球温暖化緩和に対する効果が極めて高い(図1)。
  4. 木炭施用が温室効果ガス発生量に影響しなかった理由として、使用された木炭が800°C以上の高温で炭化されたものであること、木炭を施用した土壌が、もともと有機物含量が高く、粗孔隙が大きい黒ボク土であり、木炭施用による土壌の化学性、物理性の変化が小さかった(データ掲載なし)ことが考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 40t/haまで木炭を施用しても、ばれいしょ、秋まき小麦、てんさい、大豆の収量や品質(バレイショ塊茎のデンプン、小麦、大豆子実のタンパク、てんさい菜根のショ糖含量)に有意な影響は見られていない。
  2. 本研究では、木炭施用は作物の収量や品質に対して影響を及ぼさなかったが、103報の掲載済み論文のメタ解析により、バイオ炭施用による作物の増収効果は、pHが低い土壌や砂質の土壌で高いことが報告されている。このような土壌では、バイオ炭施用による増収が期待できる。
  3. バイオ炭は、炭化温度が高くなるほど土壌中で分解しにくくなることが報告されている。低い炭化温度で製造されたバイオ炭は土壌中でより速く分解すること、その結果バイオ炭施用による土壌炭素貯留効果が小さくなることが予測される。
  4. 木炭施用にあたっては、リン酸やカリなどの肥料成分の投入量に注意が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028900
カテゴリ 寒地 小麦 大豆 てんさい ばれいしょ 輪作

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