水稲多収品種における登熟適温の品種間差

タイトル 水稲多収品種における登熟適温の品種間差
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2015
研究担当者 長田健二
大角壮弘
吉永悟志
中野洋
発行年度 2016
要約 登熟期の気温に対する単位日射量当たり収量の反応には多収品種間で差が認められる。両者の関係からみた登熟適温はインド型品種「北陸193号」および「タカナリ」、日印交雑型品種「モミロマン」 では24~25℃付近に存在し、日本型品種と比較して3℃程度高い。
キーワード 水稲、多収品種、登熟適温、単位日射量当たり収量、インド型
背景・ねらい 近年、新規需要米生産への期待等を背景に水稲の多収栽培への関心が高まり、多収品種の開発・利用が進められている。生産現場での栽培においては、生産物の利用用途への適性とともに、栽培地の生育条件に適した品種や作期の選択が重要となる。特に、大粒性やインド型など従来とは異なる特徴を有する多収品種では、好適な生育条件が一般品種とは異なる可能性があるが、生育適温の品種間差等の具体的な知見は十分に得られていない。
そこで本研究では、日本で育成された代表的な多収品種を対象に登熟期の単位日射量当たり収量と登熟気温の関係に注目して解析を行い、その関係から推定される登熟適温の品種間差を、従来の日本型品種との比較を通じて明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 日本で育成された多収4品種を対象に、東北~四国で行われた圃場試験における粗玄米重(Y)、出穂後40日間積算日射量(R)および出穂後40日平均気温(T)データを収集し(表1)、Tに対するY/Rの変動を品種間で比較すると、大粒の日本型多収品種 「べこあおば」 は対照品種(「アキヒカリ」、「日本晴」)と同様にTの上昇にともないY/Rが低下する(図1)。一方、インド型品種「北陸193号」、「タカナリ」 や日印交雑型品種「モミロマン」では、データ全体の分布としては明確な傾向がみられないが、Tの各温度階層の上位値(Y/Rp)に注目すると、24~25℃付近を最大としてそれよりも低温あるいは高温条件になるとY/Rpが低下する傾向にある(図1)。
  2. Tに対するY/Rpの反応は、いずれの品種においても最大値を有する2次式で近似できる(図2、表2)。2次式の最大値を示すパラメータa値は、対照品種と比較して「モミロマン」を除く多収品種で高い。一方、c値を登熟適温と捉えた場合、「べこあおば」 では21.1℃と対照品種の21.2℃とほぼ一致し、同様の手法で解析し21~22℃の値を得た過去の報告(村田(1964)、Hanyu et al.(1966)、林(2001))にも近いのに対し、「モミロマン」、「タカナリ」、「北陸193号」 では23.9~24.7℃と、対照品種と比較して2.7~3.5℃高い。
  3. Tが23℃を超える条件では対照品種と比較して多収品種のY/Rpがいずれも高く、特に 「北陸193号」 と 「タカナリ」 で高い(図2)。一方、23℃を下回る条件ではTに対するY/Rpの反応が品種により異なるため、品種間で2次曲線の交差がみられる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本知見は、水稲多収品種の生産場面において、栽培地の登熟期気象条件からみた適性品種の把握や出穂時期による収量変動の推定、安定多収化のための作期や適地の選定、等を行う際の基礎資料として利用できる。
  2. 同じTの条件でもY/Rに差がみられる要因として(図1)、村田(1964)は栽培技術的、土壌的、あるいは災害的条件など日射と気温以外の要因の違いによることを考察しており、Hanyu et al.(1966) はこのような要因が除かれた場合は同じTの条件でもY/Rがより高い値を示すと考え、Tの各温度階層におけるY/Rの上位値に注目した解析を行っている。本研究でもこの考え方をもとに解析している。
  3. 本解析ではTが21℃未満のデータが少なく、表2における「べこあおば」のc値の厳密な値については今後精査する必要があるが、Tに対するY/Rpの反応は他の多収3品種とは明らかに異なる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028889
カテゴリ 栽培技術 水稲 品種

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