食糧政策は気候変動下の米価変動を緩和するが政策コストは上昇する

タイトル 食糧政策は気候変動下の米価変動を緩和するが政策コストは上昇する
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2020
研究担当者 小林 慎太郎
古家 淳
Salam Md. Abdus
Alamgir Md. Shah
発行年度 2016
要約 気候変動に脆弱なバングラデシュを対象とし、米価変動を緩和するための食糧政策の効果とコストを、政策を含む米需給モデルで試算する。気候変動シナリオRCP6.0に基づくと、価格の変動係数を1ポイント低下させるには、年に1.67億ドルの追加的支出が必要である。
キーワード 温暖化, 稲作, 適応策, 備蓄, MIROC5
背景・ねらい バングラデシュは地理的特徴から、洪水やサイクロンなど災害の影響を受けやすく、農業生産は不安定である。今後は気候変動による極端な高温日の増加などで、一層の不安定化が予測されており、そのような状況へ適応するための技術開発や政策立案が重要な課題である。政府は以前から食糧市場の不安定さを緩和する目的で、コメ備蓄と共に農家支援のための調達と、消費者保護のための配給を実施してきた。このような政策が、気候変動によるコメ市場の不安定化をどれだけ軽減できるかについて、収量予測や食糧政策を組み込んだ米需給モデルにより検討する。
成果の内容・特徴
  1. 気候変動に関する政府間パネルが設定した温室効果ガスの排出シナリオRCP6.0 (高位安定化シナリオ)の下、全球気候モデルModel for Interdisciplinary Research on Climate 5 (MIROC5)で予測された2030年までの気温、降水量、日射量をコメの収量関数に適用すると、2009年以降コメ収量の変動が大きくなり、コメ生産の不安定化が予測される(図1、表1)。
  2. 食糧政策による調達量や配給量は、施設面での備蓄可能量と実際の備蓄量による物理的制約の下で、市場価格と政府価格の差額を誘因とする農家と消費者の取引先選択行動で決まると仮定する。すると調達量と配給量の関数が、上限や下限のあるデータの回帰モデル(トービットモデル)として統計的に推計され、政策のシミュレーションが可能になる。
  3. 新たな政策を仮定しないシミュレーション(ベースライン予測)のトレンドを基準とし、平均の10%以上の価格高騰年には消費者への米の配給価格を最大75%減額、10%以上の価格下落年には農家の支持価格を最大60%増額する新たな基準の政策を仮定する(図2の赤丸は新たな政策基準で市場介入が必要になる年)。この新たな政策のシナリオでは市場の需給バランスが保たれ、ベースラインに比べて価格の上昇と下落が抑制される(図2)。価格の変動幅は、約2.34ポイント減少し(表2)、仮定した食糧政策が市場を安定化させることが示される。
  4. このケースに必要な備蓄量は最大300万トンで、現状の170万トンより備蓄能力を向上させる必要がある。年平均の追加的政策コストは、備蓄施設建設・維持に0.14億ドル、備蓄米管理に1.95億ドル、調達・配給の取引のうち相殺できない分に1.83億ドルで、合計は3.92億ドルとなる。これを価格変動1%ポイントの削減に換算すると1.67億ドル(約180億円)である。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究の結果は、気候変動下での食糧政策の立案や、気候変動への各種適応策の評価、そして適応コストの推計において、基礎データとして活用できる。
  2. 本研究が前提とする将来シナリオや、気象変数の参照元とした気候モデルは、本研究が利用したもの以外にも存在する。したがって本研究は、唯一の未来像を描くものではなく、複数の仮定の下で不確実な将来の傾向を把握し、対策に生かそうとする試みの一部である。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2016_a02
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028739
カテゴリ コスト

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