放射線照射したカニのESR法による検知

タイトル 放射線照射したカニのESR法による検知
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究課題名
研究期間 2011~2015
研究担当者 亀谷宏美
等々力節子
発行年度 2015
要約 「放射線照射された食品の検知法」に基づき、カニを電子スピン共鳴法(ESR)で測定すると、放射線照射されたカニでは、鉗脚(はさみ)の殻のヒドロキシアパタイトに由来する照射誘導ラジカルが観測される。ESR法によるカニの照射判定の可能性を示す。
キーワード ESR、放射線、照射食品、カニ、エビ
背景・ねらい 日本は世界でも有数のカニとエビの消費国で、市場流通品の大部分を輸入している。海外には、エビなどの冷凍魚介類の衛生化や保存期間の延長を目的として放射線照射を認可している国があるが、日本は食品衛生法11条に基づく規格基準(2010年厚生労働省告示第336号)で放射線照射を規制している。輸入したカニやエビが放射線照射されているか否かを検知する必要のため、本研究では、日本国内に多く流通する種類のカニとエビを対象に、ESRによる照射誘導ラジカルの検出と同定を行い、照射判定の可能性を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 本研究では、日本国内に流通する輸入カニ・エビの約9割を占めるズワイガニ、タラバガニ、ワタリガニ、ならびに、ブラックタイガーとバナメイエビを試料とする(表1)。冷凍状態のまま1kGy照射して10日間冷凍保存した後、カニは脚とはさみの殻を、エビは腹節の殻と尾扇をそれぞれ乾燥粉末としたものをESR測定試料として用いる。
  2. カニの脚は、照射の有無にかかわらず、すべての品種で有機フリーラジカル由来の1本線信号(g=2.004)のみが観測され、照射によって誘導されるラジカルは検出されない。一方、照射したカニのはさみでは、非照射カニのはさみで検出されない新たな信号(g1、g2、g3)を明瞭に観測できる(図1)。
  3. エビは、照射の有無にかかわらず、いずれの部位においてもすべての品種でマーカー信号(M3、M4)の間に有機フリーラジカル由来の1本線信号(g=2.005)のみが観測され(図2)、照射によって特異的に誘導されるラジカルは検出されない。
  4. カニのはさみにはヒドロキシアパタイトが含まれる。非照射のヒドロキシアパタイトは明瞭な信号を示さないが、照射によって複数の信号が観測される(図3)。照射ヒドロキシアパタイトと照射カニのはさみのESRスペクトルを比較すると、信号の形状やすべてのg値(g1、g2、g3)が一致する。そのため、照射カニのはさみで誘導される信号は、主に照射ヒドロキシアパタイトに由来する信号と同定できる。
  5. 日本では、貝殻付きの貝において、照射ヒドロキシアパタイトに由来するラジカルの信号を指標とした照射検知法が通知されている(食安発第0910第2号「放射線照射された食品の検知法」)。3種のカニ(ズワイガニ、タラバガニ、ワタリガニ)の各5ロットにおいて、はさみから得られるESRスペクトルに通知法の判定基準を適用すると、すべての照射(1kGy)試料は「照射」と判定される。ESRを用いることでカニのはさみで照射の有無を判定できる可能性がある。
成果の活用面・留意点
  1. 放射線照射したカニのはさみをESRで測定すると、ヒドロキシアパタイト由来の照射誘導ラジカルの信号が検出され、殻付きの貝を対象とする検知法の判定条件を用いて照射判定できる可能性がある。
  2. カニのESRによる照射検知法を確立するためには、来歴や種類の異なるカニを対象とするとともに、試験室間共同試験による照射判定の再現性の検証等が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028596
カテゴリ 乾燥 品種 わた

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