水田農業の先進経営における新技術導入と経営対応の効果

タイトル 水田農業の先進経営における新技術導入と経営対応の効果
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2015
研究担当者 島義史
金岡正樹
梅本雅
関野幸二
磯島昭代
伊藤和子
迫田登稔
笹原和哉
千田雅之
宮武恭一
松本浩一
渡部博明
岡崎泰裕
発行年度 2015
要約 水田農業の将来の担い手である80~100ha規模の経営が業務用多収品種と水稲乾田直播を組み合わせた大規模水田輪作を導入すると、60kg当たり米生産費は15ha以上層の平均に比べ1~4割低くなり、小麦-大豆2毛作の収入合計は移植水稲の慣行収入を上回る。
キーワード 大規模水田作、乾田直播、輪作体系、経営評価
背景・ねらい 水田作においては数10haから100ha規模に達する大規模な担い手経営が成立しつつあるが、20haを超す大規模経営に関する経営データは少なく、体系的な現地調査による農作業構造と収益構造の解明が課題となっている。そこで、農研機構の経営研究者が現地調査を行っている30~100ha規模の先進経営を12事例取り上げ、調査経営が現在、直面する問題の要因解析や新たに導入しようとする技術の経営評価を行い、担い手経営の経営発展の到達点を解明した。地域条件ごとの特徴は以下の通りである(表1)。
成果の内容・特徴
  1. 調査事例の生産性向上の到達点を60kg当たり米生産費についてみると、平地純農村で80~100ha規模の水田輪作を行っている事例では7,385~9,580円と米生産費統計の15ha以上層の生産費に比べ1~4割低い水準である。一方、小区画圃場や排水不良田を含む平地地域や中間地域の30~50haの事例では15ha以上層と同等の10,620~12,360円、山間条件不利地域の事例では15ha以上層と比べ1~5割増の12,519~15,036円である。
  2. 平地純農村の80~100ha規模の経営でコストダウンが可能になったのは、業務用水稲多収品種を導入するとともに、大区画整備された汎用水田で水稲乾田直播栽培を取り入れた大規模水田輪作を行い、畑作用のカルチや鎮圧ローラー等を汎用利用して水稲乾田直播の安定化と省力化に努めたためである。こうした大規模経営では、大豆の不耕起栽培や狭畦栽培や小麦新品種導入によって、転作部門の収益も向上している。
  3. 具体的な新技術導入効果を千葉県のJ営農組合でみると(表2)、規模拡大と大区画化による機械施設費の削減効果および新品種と乾田直播採用による増収と省力化効果により、60kg当たり米生産費は慣行の移植「コシヒカリ」が全国平均の69%、乾田直播「あきだわら」が50%である(図)。また、小麦の多肥栽培、大豆の不耕起狭畦栽培を組み合わせた小麦-大豆2毛作では、千葉県平均をそれぞれ32%、82%上回る462kg、246kgの単収が得られ、数量払いを含めた10a当たり収入合計は移植水稲を上回る(表3)。
  4. 小区画圃場や排水不良田を含む平地地域の30~50ha規模の経営は、米直売を重視した経営発展をめざし、水稲の有機栽培、機能性品種の導入、米粉加工等に取り組んでおり、新需要開拓をめざす水稲専用品種のリードユーザーである。山間条件不利地域の大規模経営では、畦畔管理負担の軽減や高齢化対策を切望しており、湛水直播による稲WCS栽培、獣害対策を兼ねた水田放牧のユーザーである。
成果の活用面・留意点
  1. 将来の水田農業の担い手として期待される30~100ha規模のモデル経営の技術構造や生産性向上の達成水準が示されるとともに、いくつかの事例については経営シミュレーションによる新技術導入の将来予測も行っており、各地域において水田農業の担い手像を作成する際の参考となる。
  2. 転作助成金や米価水準が大きく年次変動しているため、収益性についての分析結果を活用する際には、米価水準や交付金単価に留意する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028431
カテゴリ 加工 乾田直播 機能性 規模拡大 狭畦栽培 経営管理 畦畔管理 コスト 小麦 省力化 新技術導入 新品種 水田 大規模経営 大豆 品種 不耕起栽培 輪作 輪作体系

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