タイトル |
窒素余剰量を考慮しながら所得最大となる作付構成を提示できる経営計画モデル |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究課題名 |
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研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
関根久子
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発行年度 |
2015 |
要約 |
目的関数を所得の最大化とする経営計画モデルに窒素投入および窒素持出に関するプロセスを加え、窒素余剰量を制限する経営計画モデルである。本モデルを用いることで窒素余剰量を考慮しながら所得最大となる作付構成が提示できる。
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キーワード |
窒素余剰量、経営計画モデル、所得最大化、環境保全
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背景・ねらい |
日本における環境保全型農業は、慣行農法を基準に作物ごとの窒素投入量を削減することが重視されている。これに対してドイツでは、窒素投入量が多くても、農産物としての持出量と見合えば、またある作物の窒素収支がプラスであっても他の作物の窒素収支が十分にマイナスであれば、経営全体として環境に考慮しているとされるなど、収量性に配慮した窒素投入量の規制が行われている。日本でも環境保全型農業の取り組みが増加しているが、同時に生産性の向上も望まれている。こうした状況を考え、経営全体の面積当たり窒素余剰量を考慮しながら所得最大となる作付構成を提示できる経営計画モデルを作成する。
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成果の内容・特徴 |
- 窒素余剰量はドイツの例を参考に、「雨水・かんがい水」による投入と「脱窒」による持出については考慮せず、投入を「化学肥料・有機物・生物固定」、持出を「作物持出部位」に限定して求める。
- 作成するモデルは、目的関数を農業所得の最大化とするモデルに窒素余剰量に関する制約式を加えたものである。表1に示した緑の部分が所得最大化モデルであり、このモデルに窒素投入に関するプロセスと制約式(表1オレンジ部分)、窒素持出に関するプロセスと制約式(表1青部分)を加える。そして、これらプロセスと制約式から求められる窒素余剰量を制限する(表1赤部分)制約式を加える。モデル作成に用いたデータは表2に示す。
- 窒素余剰量を2kg/10aから5kg/10aまで制限した場合の計算結果を図1に示す。制限が2kg/10aまたは3kg/10aの場合、収量が高いものの多くの窒素を必要とする小麦(標準)は選択されず小麦(減肥)が選択される。また、窒素余剰量が多くなる小麦連作は限られるため作付面積は小さくなる。そのため、所得についても2.8百万円または9.4百万円と低い値となる。窒素余剰量の制限が4kg/10aまで緩和されると、小麦(標準)が選択され、作付面積も44.4haまで拡大する。しかし一部に小麦(減肥)が選択されることから所得は15.7百万円にとどまる。窒素余剰量の制限が5kg/10a以上になれば、作付面積は45.0haとなり、窒素余剰量を制限しない場合と同じ作付構成および所得16.5百万円となる。この場合、面積当たりの窒素余剰量は4.2kg/10aである。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究で作成した経営計画モデルを用いることで、窒素余剰量を制限しながら所得最大となる作付構成が得られ、窒素による環境への影響を抑制した営農計画の策定が可能となる。
- 収量と窒素投入量の関係は地域のよって異なり、実際の運用に当たっては分析対象経営に即して計算する必要がある。
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カテゴリ |
経営管理
小麦
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