マツと共生するきのこ、ヌメリイグチがサクラで育つ

タイトル マツと共生するきのこ、ヌメリイグチがサクラで育つ
担当機関 (国)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 村田  仁
根田  仁
丸山  毅
横田  智
山田 明義
発行年度 2016
要約 ヌメリイグチは、マツ科針葉樹のみと共生する菌根性きのこで優秀な食用菌とされますが、組織培養で育てやすいオオシマザクラに感染させ、成育させる技術を開発しました。
背景・ねらい 森林総合研究所では、広葉樹をマツタケの宿主とすることに成功しています。この現象が他の菌根性きのこでも起きるか否かを調べるため、マツ科針葉樹だけに共生するとされていた菌根性食用きのこ「ヌメリイグチ」を、マツタケで実績のあった広葉樹セドロとオオシマザクラに無菌培養系で感染させました。その結果、ヌメリイグチはセドロには感染しませんでしたが、オオシマザクラには根に共生器官を形成し、ヌメリイグチ菌糸もオオシマザクラも良く成長しました。本研究から、マツ科針葉樹に特異的に共生すると考えられていた菌根性きのこのなかには広葉樹とも共生し、その成育を活性化する種があることが明らかになりました。

宿主
菌類などの寄生または共生の対象となる生物。

菌根
植物と菌類との共生体。菌類の菌糸が植物の根の表面や内部に侵入し、根の細胞から栄養分を受け取る。植物は菌根のはたらきで、水、無機養分の吸収能力が高まる。
成果の内容・特徴 研究の背景
ヌメリイグチは、マツ科針葉樹に特異的に共生する菌根性きのこの代表とされていました(図1)。このような菌根性きのこは、マツの根の表面を被うとともに根組織に侵入した後、「菌根」と呼ばれる共生器官を作って生育し、子実体(きのこ)を発生させます。これまでに、私たちは、マツタケが中南米に分布する広葉樹セドロ(センダン科)と日本の広葉樹のオオシマザクラ(バラ科)に感染できる培養技術を開発しました。この技術により、林地での人工栽培が難しかったマツタケ栽培に、組織培養苗を使った施設園芸的な栽培法の道が拓けたのです。そこで、この無菌培養系を使うことで、マツ科針葉樹のみと共生すると考えられていた他の菌根性きのこも広葉樹で育てられるのではないかと考え、優秀な食用菌であるヌメリイグチを使って同様の実験を行いました。

ヌメリイグチはオオシマザクラと共生する
マツタケの実験で用いた、花崗岩土壌(山砂)に最低限の栄養源を添加した培地に、セドロまたはオオシマザクラの無菌培養苗とヌメリイグチ菌糸を移植し、他の微生物が入らない状態で約4ヶ月間、一緒に培養しました。その結果、ヌメリイグチ菌糸はセドロの根の表面には菌糸の鞘を形成するものの、根の組織には侵入せず、菌糸もセドロも生育しませんでした。しかし、オオシマザクラではセドロの場合と異なり、ヌメリイグチはオオシマザクラの根の組織に侵入し菌糸集落を形成したうえ(図 2)、感染したオオシマザクラも大変良く育ちました(図3、表1)。

成果の意義と発展性
セドロ、オオシマザクラとの共生に成功したマツタケの研究からは、培養条件が整えば、マツ科樹種を宿主にする菌根きのこでも様々な広葉樹の根に侵入し、共生するのではないかと考えられました。しかし、同じくマツ科に共生するきのこであるヌメリイグチでの結果から、広葉樹と共生はするものの、宿主とする樹種を選ぶものもあることが分かりました。
今回用いた組織培養苗を使った施設栽培法を用いれば、無菌条件できのこ菌糸と樹木苗との間に良好な関係を結ばせることができます(栽培条件等詳細は論文でご確認ください)。様々な菌根きのこと組織培養が容易な樹種との組み合わせを試みることで、野外での樹木への感染や菌根苗の移植が困難な菌根きのこの、施設園芸的な人工栽培技術開発に役立つと考えられます。

詳 し く は、Murata et al. (2015) Mycoscience56:606-611 をご覧下さい。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028298
カテゴリ 栽培技術 栽培条件 さくら 施設園芸 施設栽培 ばら

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