セラヤ天然林では自殖種子の選択的排除が健全な他殖種子生産を維持している

タイトル セラヤ天然林では自殖種子の選択的排除が健全な他殖種子生産を維持している
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2015
研究担当者 谷 尚樹
Norwati Muhammad
Lee Soon Leong
Lee Chai Ting
津村 義彦
発行年度 2015
要約 飛翔力の弱い昆虫によって花粉が散布されるフタバガキ樹種セラヤは、密度低下した択伐林では花粉が有効に散布されず自らの花粉で受精した不健全な種子が多産される。天然林ではこれらの種子を選択的に排除して、他個体の花粉を受精した健全な種子が生産されている。
キーワード 熱帯雨林, フタバガキ, 虫媒, 花粉散布, 受精, 自殖種子, 選択的排除
背景・ねらい 一定の大きさに成長した有用樹種のみを伐採する択伐と呼ばれる手法によって木材が生産される熱帯雨林では、森林更新によって択伐林の蓄積が回復し、択伐後約30年で二回目の択伐を行うことが期待されている。しかし、花粉が動物によって媒介される熱帯樹木では、特に飛翔力の弱い昆虫に花粉散布を依存する樹種において、択伐による密度低下によって花粉が充分に散布されず、自らの花粉による受精によってできた種子(自殖種子)が多く、その健全性に問題が生じている。一方で、密度低下を生じていない天然林でもかなりの高頻度で自らの花粉が散布されているが自殖種子はほとんど見当たらず、その排除の機構は明らかになっていない。そこで、自らの花粉や自らの花粉と受精した胚珠が種子形成までに排除される条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 天然林試験地と択伐林試験地の全成木と一斉開花時に採取した種子の遺伝子型をそれぞれ遺伝マーカーにより決定し、各種子の花粉親を同定した(父性解析)(図1)。
  2. 父性解析結果をもとに花粉散布の距離による減少確率をモデル化した花粉散布モデル(平成23年度国際農林水産業研究成果情報第19号)を用いて花粉散布確率は求められ、天然林では散布距離がほぼ数m以内の自家受粉が高頻度で生じていることを確認できる(図1)。
  3. 父性解析結果から花粉散布確率と開花量を推定する花粉散布モデルを発展させ、自らの花粉や自家受精した胚珠が排除される度合い(図2縦軸)の同時推定を階層ベイズ法によって可能にした。
  4. 同一樹種の立木密度が低い択伐林では、自らの花粉および自家受精した胚珠は排除されておらず大量の自殖種子が生産されている。一方、立木密度が高い天然林でも自家受粉は生じているが、受粉後、種子が形成される過程で自らの花粉と自家受精した胚珠の両方またはいずれかが排除されている(図2)。
  5. 母樹に届く花粉総量が多いと自らの花粉や自家受精した胚珠の排除が発生し、花粉総量が少ないと選択的な排除は発生せず自殖種子も生産される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 自らの花粉による受精の回避に必要な許容伐採量を推定することができる。
  2. 健全な種子生産を目指す択伐指針の作成を通して熱帯雨林の持続的利用に貢献できる。
  3. 種子の花粉親を特定し、そこから花粉散布モデルを用いて自らの花粉の排除割合を統計学的に推定したもので、選択的排除の機構を発生学的に解明したものではない。
  4. 択伐林では密度低下による花粉散布の阻害によって自殖種子が生産され繁殖を補完している。他のフタバガキ科樹種では自殖由来の実生の不健全性が報告されているが、セラヤ(Shorea curtisii)においてもこれらの実生の不健全性を検証する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028263
カテゴリ 受粉 繁殖性改善

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