イネのリン利用効率に関する新規遺伝子座の同定

タイトル イネのリン利用効率に関する新規遺伝子座の同定
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2015
研究担当者 近藤勝彦
Pariasca-Tanaka Juan
Wissuwa Matthias
TJ.Rose
発行年度 2015
要約 吸収リン量に対する乾物生産量を示す一つの重要な指標であるリン利用効率(PUE)に関する量的形質遺伝子座(QTL)は、イネゲノムの第1および11染色体上にある。
キーワード イネ, リン利用効率, ゲノムワイド連関解析, 低リン耐性, 量的形質遺伝子座
背景・ねらい リンはすべての作物生産に重要な必須元素で、土壌中のリン欠乏はリン肥料の施用により補われている。しかし、リン肥料の原料である高品質のリン鉱石は、その資源が限られていることから、リン肥料の価格は高騰し開発途上国の貧困な農家による入手は、今後、さらに困難になることが予測されている。このことから低リン耐性育種の一つとして、リン利用効率を向上した栽培品種の開発が重要である。このため未だ明らかになっていないリン利用効率(PUE)に関わる量的形質遺伝子座(QTL)をゲノムワイド連関解析(GWAS)により同定し、集積した情報を用いてリン代謝メカニズムの解明と低リン耐性育種への利用を図る。
成果の内容・特徴
  1. 水耕栽培において、播種後10日に0.8mgのリンを加え50日目に収穫し、イネ個体の総リン量とバイオマスを測定する。PUEは{バイオマス(g)/植物体リン総量(mg)}の計算により精度よく評価できる。
  2. IRRI(国際稲研究所)の遺伝資源センターから譲渡された292品種・系統(アクセッション)の中に、広いPUEの変異を認める(最高値:2.8, 最低値:1.4, 平均値:2.2)。
  3. 供試したアクセッションのPUE値と遺伝子型情報を用いたゲノムワイド連関解析(GWAS)は、PUEに関与する新規のQTLが第1と第11染色体に存在することを示している(図1A)。
  4. 高いPUEを示す品種のなかで、Yodanya(PUEは2.7)やMudgo(同2.5)などのインド型品種は第1染色体にQTLが、バングラデシュのインド型品種で栽培型のアウスに分類されるSanthi Sufaid(同2.6)やDJ123(同2.6)などは第11染色体にQTLがある(図1A)。
  5. 特に第1染色体のPUEの候補遺伝子(PUE1-7)は、低リン条件でその遺伝子発現が増加するが、遺伝子発現レベルでの品種間差異はない(図2)。しかし、PUE1-7のタンパク質のコード領域には、高PUE品種(Yodanya, Mudgo)に特異的なアミノ酸配列の変異が存在することから、この変異がタンパク質の機能に影響していると考えられる。またPUE1-7は、リンが多く含まれているRNAの分解に影響する遺伝子と高い類似性があることから、候補遺伝子として有望である。
成果の活用面・留意点
  1. PUEに関連する遺伝子/QTLの利用により低リン耐性イネ育種が可能になり、アフリカなどの低土壌肥沃地域へ適応した品種や、リン酸肥料を節約した栽培技術の開発が可能となる。
  2. IR64やコシヒカリなどの普及品種のPUE値は低い(前者のPUEは1.91,後者は1.88)。これは高施肥量の下で品種選抜が行われてきたことにより、本来在来品種等が持っていたPUEなどの低リン耐性に関わる有効な遺伝子が欠落したためと考えられる。本QTLの利用により、これまでの育種で注目されてこなかったPUEに関わる形質を、普及品種に再導入する低リン耐性イネ育種が可能となる。
  3. 今回明らかとなった新規のPUE遺伝子座や候補遺伝子が、リン利用効率向上に実際に貢献するか、さらなる解析をおこなう必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028249
カテゴリ 育種 遺伝資源 栽培技術 水耕栽培 施肥 播種 品種

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