長期の乾燥による葉の黄化防止に関わる遺伝子を発見

タイトル 長期の乾燥による葉の黄化防止に関わる遺伝子を発見
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究課題名
研究期間 2010~2015
研究担当者 中島 一雄
圓山 恭之進
髙﨑 寛則
吉田 拓也
篠崎 和子
高橋 史憲
藤田 美紀
明賀 史純
豊岡 公徳
篠崎 一雄
発行年度 2015
要約 植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、乾燥ストレスを受けると葉に蓄積するが、シロイヌナズナの環境ストレス応答に関わる7つのSNAC-A遺伝子は、ABAによって誘導される黄化関連遺伝子の発現を調節しており、長期の乾燥による葉の黄化において重要な役割をもつ。
キーワード 干ばつ, 乾燥, 葉の黄化, 遺伝子発現, シロイヌナズナ
背景・ねらい 干ばつは世界各地で発生し、農業生産に大きな被害をもたらしている。干ばつによる食料不足のリスクが高い開発途上地域での被害を抑えるため、干ばつに強い作物を開発することが重要である。農作物では干ばつ時の乾燥ストレスにより、葉の黄化や落葉、収量の減少などが引き起こされる。葉の黄化では、葉緑素(クロロフィル)が分解し、その結果、光合成能が低下して成長や収量が低下するため、乾燥による葉の黄化の機構を明らかにすることは、農作物の開発などを通じて干ばつ下でも安定な食料生産を可能にするために重要である。植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、乾燥ストレス時に葉に蓄積し、気孔を閉じて水分の蒸散を抑え、ストレス応答遺伝子の発現を促す。一方で、ABAの処理が長時間に及ぶと黄化が進行する。しかし、ABAによる葉の黄化の分子メカニズムは、明らかになっていなかった。本研究では、理化学研究所、東京大学と共同で、ABA応答に関わる遺伝子群の中から、葉の黄化に関わる遺伝子を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 植物に特異的な転写因子であるNACの遺伝子ファミリーは、実験植物シロイヌナズナにおいて100以上の遺伝子で構成される。その中でANAC055, ANAC019, ANAC072/RD26, ANAC002/ATAF1, ANAC081/ATAF2, ANAC102, ANAC032は、ストレス応答に関わるSNAC-AA subfamily of stress-responsive NAC)遺伝子で、長時間のABA処理によって発現が誘導される。
  2. 野生型シロイヌナズナと上記7種のSNAC-A遺伝子が働かないようにした7重変異体の葉を切断し、それぞれABAで長時間処理すると、野生型と比較して7重変異体では葉の黄化が抑制される(図1a, b)。
  3. SNAC-A 7重変異体のABA応答性遺伝子発現を調べると、主要なABA応答を調節する転写因子であるAREB/ABFファミリーが調節する乾燥耐性に関わる遺伝子(デハイドリン遺伝子RAB18、親水性タンパク質遺伝子RD29B等)は正常に発現しているにもかかわらず、SNAC-Aファミリーが調節する葉の黄化に関わる遺伝子(老化関連遺伝子SAG26、チオレドキシン遺伝子ATH8等)の発現は野生型よりも弱い(図1c)。
  4. 以上のように、SNAC-Aファミリーは、AREB/ABFファミリーが調節するABA応答性遺伝子とは別に、葉の黄化に関わるABA応答性遺伝子の発現を調節しており、長期の乾燥による葉の黄化において重要な役割をもつ(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. この研究成果は、干ばつ耐性作物の開発において、干ばつ下での長期にわたる乾燥ストレスによる植物の黄化を調節し、作物の収量等の改良につながると期待できる。
  2. SNAC-A遺伝子ファミリーは、シロイヌナズナ以外にも、イネ、ダイズ、トウモロコシなどの作物にも保存されているため、多くの作物への応用が期待できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028244
カテゴリ 乾燥 大豆 とうもろこし

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