伏流式人工湿地ろ過システムは有機排水を冬期も含め長期間安定して浄化できる

タイトル 伏流式人工湿地ろ過システムは有機排水を冬期も含め長期間安定して浄化できる
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究課題名
研究期間 2009~2015
研究担当者 加藤邦彦
井上京
家次秀浩
菅原保英
辻盛生
原田純
張暁萌
泉本隼人
青木和彦
発行年度 2015
要約 伏流式人工湿地ろ過システムは、酪農施設、養豚場、養鶏場などからの排水に含まれる有機物や窒素、リン、大腸菌などを冬期も含めて5~10年間にわたり安定して浄化できる。運転費用は一般的な活性汚泥処理の5%程度であり、実用的な汚水処理法である。
キーワード 人工湿地、環境保全、排水処理、畜産排水、低コスト
背景・ねらい 酪農施設、養豚場、養鶏場などから排出される汚水は、生活排水よりも有機物濃度が高く、そのまま放流されると地下水や河川の汚濁源となるため、低コストで省力的な汚水処理法が求められている。酪農排水などを処理するために2005年から北海道や東北において産学官の連携により開発してきた伏流式人工湿地ろ過システムは、ヨシなどを植栽した砂利や砂の層で汚水をろ過して自然の力を利用して水を浄化する手法であり、好気・嫌気の多段型ろ床からなるハイブリッド構造の採用や、目詰まりや凍結を回避する独自の工夫などにより、面積あたりの浄化効率を高め、適用対象と適用地域を拡大してきた。実規模で稼働するシステムの性能を冬期も含め長期間評価することにより、このシステムは畜産系有機排水を浄化する実用技術として安心して提供できることを示す。
成果の内容・特徴
  1. 2008年度普及成果情報「搾乳牛舎パーラー排水処理のための伏流式人工湿地(ヨシ濾床)システム」に始まり、2012年度研究成果情報「超高濃度有機性排水を浄化できるハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システム」に発展した技術について、さらに適用対象が拡大し、季節・経年安定性を含めた性能が検証されたことを示す成果である。
  2. 調査したシステムは、搾乳牛舎パーラー排水、養豚スラリー尿液、養鶏場洗卵施設排水を浄化している実規模の施設であり(表1)、汚水中の有機物(BODやCODCr)、懸濁物質(SS)、全窒素、全リン、大腸菌を浄化している(調査頻度12~6回/年)。
  3. 冬期を含め5~10年間にわたり性能を評価した結果、有機物や窒素、リンの浄化率は長期間安定している(図1)。また、冬期も夏期と同様に汚水を浄化できる(図2)。
  4. 当システムの運転費用(ポンプの電気代など)は、一般的な活性汚泥処理法の運転費用(電気・薬品代など)に比べて20分の1程度である(畜産環境整備機構の家畜糞尿処理施設・機械選定ガイドを参考に、原水および処理水のBODが同じ条件で比較)。
  5. これまでに北海道14ヶ所、東北4ヶ所、関東1ヶ所、近畿1ヶ所、ベトナム2ヶ所(合計22ヶ所)に導入されている(2016年1月現在)。酪農施設、養豚場、養鶏場のほか、国立公園の来園者施設2次処理水(近隣の面源排水を含む)、チーズ工場排水、酪農メタン発酵消化液、家庭生活排水、ペットボトル再生工場排水なども処理している。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:酪農施設、養豚場、養鶏場、食品工場などで発生する有機性汚水の浄化処理施設として導入できる。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本全国(2020年40ヶ所、2025年80ヶ所)、海外(2020年5ヶ所、2025年15ヶ所)、1システムあたりの導入費用:規模に応じて数十万円~数千万円(同じ処理能力のある活性汚泥処理法に比べて3/4程度)。
  3. その他:原水の水質・量に応じて処理水質を予測可能であり、ろ床面積や段数などのシステム構成を設計できる。施設導入後に汚濁負荷が極端に増えると処理水質が悪化する危険があるため、将来計画を含めたユーザーのニーズを把握して設計する必要がある。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028162
カテゴリ 低コスト 乳牛 メタン発酵消化液

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