高解像度気象データによる東北地方での葉いもち感染危険度の年次変動の検証

タイトル 高解像度気象データによる東北地方での葉いもち感染危険度の年次変動の検証
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2014
研究担当者 大久保さゆり
菅野洋光
小林隆
発行年度 2014
要約 1kmメッシュへ高解像度化した気象データをBLASTAMに適用し、発生面積と比較すると、感染好適条件の出現頻度は実際の葉いもち発生傾向とよく一致する。感染好適条件が頻出する年の気象場は、亜熱帯ジェットの南下や前線停滞など湿潤な状態を示す。
キーワード 葉いもち、BLASTAM、アメダス、高解像度気象データ、高層気象解析
背景・ねらい 葉いもち予察モデル(BLASTAM)はアメダスでの気象観測値から葉いもちの感染好適条件を予察するために開発され、アメダス地点(設置間隔約20km)ごとの計算結果が広域感染の判断に用いられている。他方、アメダスの観測開始から30年が経過し、観測データの蓄積とともに、気象データを高解像度化する手法の開発も進んだ。本研究では、メッシュ化した気象データをBLASTAMに用いることで、地点単位ではなく地域全体の葉いもち発生予察が可能になること、および1kmメッシュ単位での予察によって県単位で公表される毎年の葉いもち発生面積との比較が可能になることに着目した。東北地方を対象に、34年間の高空間解像度の気象データを作成し、BLASTAMで求めた感染好適条件の出現頻度と実際の発生面積との対応関係と、感染好適条件と気象との関係とを検証した。
成果の内容・特徴
  1. 1978年から2011年、6月下旬から8月上旬の51日間を対象として、東北地方6県のアメダス観測値(降水量、風速、日照時間、気温)を統計的手法(空間内挿)によって1kmメッシュ化し、BLASTAMによる葉いもちの予察をメッシュ毎に行なった。国土数値情報土地利用3次メッシュデータ(1976年版)を参照し、東北全域のうち水田、畑地のいずれかを含むメッシュを計算対象とした。得られた感染好適条件(準感染好適条件を含む)の各メッシュの解析期間中の平均出現頻度(感染好適条件の出現日数/解析期間日数、図1)は、全体的に太平洋側南部で高く、日本海沿岸の平野部で低い傾向にある。いもち病は寡照・多湿の条件下で発生しやすいため、ヤマセの影響が大きい太平洋側や、梅雨前線に近い南部で感染好適条件の出現頻度が高くなる。
  2. BLASTAMで推定した感染好適条件の全対象メッシュの平均出現頻度と、実際の葉いもちの発生面積割合との年次変動を比較した(図2)。BLASTAMでの発生予察は、年次ごとの葉いもち発生傾向を捉えている。県別では、感染好適条件の出現頻度が高い宮城県(r=0.56、1%有意)と福島県(r=0.51、同)で、両者の変動が一致した。
  3. 感染好適条件の出現頻度が高かった順に6年を多予察年、低かった順に6年を少予察年と定義し、これらの年の合成図によって大規模気象場の特徴を調べた。図3、4に両者の200hPa風系と850hPa高度の解析期間全体(気象庁長期再解析 JRA-25に含まれない1978年を除く)からの偏差を示す。葉いもち予察頻度の多い年(図3)は、一般的な年に比べ亜熱帯ジェットの位置が南下し東北地方付近にあることや、前線帯の停滞など、湿潤な状態であったことを、少予察年(図4)には高気圧性循環、本州一帯の高圧部など暑夏の特徴がみられ多照・少雨であったことを、それぞれ示唆している。
成果の活用面・留意点
  1. 葉いもちの予察と実発生との対応、大規模気象場との関連を明らかにしたことにより、将来気候予測実験などでの中長期的な葉いもち発生予察への応用が期待される。
  2. 本研究はBLASTAMによる感染好適条件の出現を発生面積との比較によって年ごとに評価したものであり、葉いもち予察の日単位での精度評価とは異なる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028073
カテゴリ 亜熱帯 いもち病 水田

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