生産費からみた北海道放牧酪農経営の収益構造と技術構造の特徴

タイトル 生産費からみた北海道放牧酪農経営の収益構造と技術構造の特徴
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究課題名
研究期間 2013~2014
研究担当者 杉戸克裕
発行年度 2014
要約 北海道の放牧酪農経営は、飼養頭数が同じ規模層の舎飼経営と比べて乳量水準が低く粗収益が低いにもかかわらず同水準の所得が確保されている。その理由は生産資材投入や労働投入等が少ない等技術構造が違い、購入及び償却費用等の生産費が低いためである。
キーワード 放牧経営、生産費、舎飼経営、飼料費、労働時間
背景・ねらい 北海道酪農の規模拡大が進み負債累積や労働過重等が問題化する中で、放牧飼養を見直して生産費低減や労働時間削減により経営改善を図る酪農経営が出現し、放牧技術の開発とともに放牧導入効果を分析した事例研究が蓄積されている。ただし、これら先行研究は主に特定の先進地域・事例の分析に限られる側面がある。そこで、農業経営統計のうち牛乳生産費調査個票を組み替えて再集計して放牧経営を抽出し、舎飼経営との比較を行うことにより、北海道の放牧酪農の収益及び技術構造の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 2011年牛乳生産費調査個票(北海道)のうち、「搾乳牛換算1頭あたり放牧地利用面積が10a以上」かつ「年間放牧地利用時間が600時間以上」である経営体を「放牧経営」とし、その双方とも無である経営体を「舎飼経営」として抽出し、再集計を行った(表1)。その結果、放牧経営は64経営体(26.3%)、舎飼経営は112経営体(46.1%)であり、うち放牧経営が多い頭数規模階層は、1.搾乳牛30頭以上50頭未満(以下、小規模層とする)の25経営体、2.同50頭以上80頭未満(以下、中規模層とする)の24経営体であった。
  2. 同規模階層の放牧経営と舎飼経営を表2で比較する。土地利用については、放牧経営が牧草栽培地・採草地や放牧地等の面積が大きく、飼料用とうもろこしを含む普通畑の面積が小さい傾向にある(表2-1)。粗収益については、放牧経営が小規模層で496万円(16.3%)、中規模層で485万円(9.9%)も低いにもかかわらず、所得では、放牧経営が小規模層で540万円(舎飼経営:557万円)、中規模層で1,031万円(舎飼経営:1,026万円)とほぼ同金額を確保している。
  3. 技術項目を比較すると、放牧経営の飼料給与は、購入配合飼料と自給コーンサイレージ(CS)が少なく、自給牧草サイレージ(イネ科混播GS)が多くなっている(表2-2)。その結果、1頭あたり乳量(乳脂肪分3.5%換算)が小規模層で1,652kg(18.1%)、中規模層で1,275kg(13.1%)低く、無脂乳固形分も低くなっている。また放牧経営は、搾乳牛の5産以上頭数率が高く、家族労働時間も短い傾向にある。
  4. 経営体あたりの生産費を比較すると、放牧経営は流通飼料費、乳牛償却費、労働費等が低く、全算入生産費は小規模層で592万円(19.2%)、中規模層で651万円(14.3%)低くなっている(表2-3)。ただし、放牧経営は乳量水準が低いため、生乳100kgあたり生産費で比較すると流通飼料費を除いてその格差は小さくなる傾向にある。
成果の活用面・留意点
  1. 舎飼経営と比べた放牧経営の特質について2011年度の統計数値による比較が可能になり、放牧酪農を担当する研究者や行政関係者、放牧を検討する酪農家等の参考になる。
  2. 牧区数や牧区あたり面積等をはじめとする放牧方式の違いは考慮できていない。
  3. 本情報における牛乳生産費統計調査の個票組み替え集計は、統計法の規定に基づく利用申請により農林水産省「25統計第733号」通知による利用許可を得て、調査票情報を独自集計したものである。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010028030
カテゴリ 規模拡大 経営管理 飼料用作物 とうもろこし 乳牛 放牧技術

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