牛乳房炎原因菌であるマイコプラズマ2菌種の全ゲノム配列の決定

タイトル 牛乳房炎原因菌であるマイコプラズマ2菌種の全ゲノム配列の決定
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究課題名
研究期間 2013~2014
研究担当者 秦英司
村上賢二
発行年度 2014
要約 2005年以降わが国でも牛乳房炎原因菌として分離されているMycoplasma californicumおよびM. canadenseのゲノム情報には、マイコプラズマの主要な病原因子である莢膜の合成あるいは活性酸素の産生に関わる遺伝子群が認められない。
キーワード 牛乳房炎、Mycoplasma californicumMycoplasma canadense、ゲノム解析
背景・ねらい わが国における牛マイコプラズマ乳房炎原因菌として、2005年以降Mycoplasma bovisに加え、新たにM. californicumM. canadenseも牛乳房炎乳から分離されている。これらは病原因子を含めた多くの細菌学的特性、ならびに発病機構が未解明である。その理由の一つに、両菌種の十分なゲノム解析が未実施である点が挙げられる。本研究では、国内で分離された牛乳房炎乳由来の両菌種株について世界に先がけて全ゲノム配列を決定し、遺伝学的特徴を解明する。
成果の内容・特徴
  1. M. californicum HAZ160_1株のゲノムサイズは799,088bpであり、M. canadense HAZ360_1株のゲノムサイズは693,241bpである。両株ともプラスミドの存在は認められない(図1)。
  2. M. californicum HAZ160_1株には蛋白質をコードしていると考えられる遺伝子(CDS)が574個、偽遺伝子が15個、tRNA遺伝子が31個、rRNA遺伝子(rrn)オペロンが2組存在し、同様にM. canadense HAZ360_1株にはCDSが484個、偽遺伝子が15個、tRNA遺伝子が32個、rrn オペロンが2組存在している(表1)。
  3. ドラフトゲノムが公表されている菌種の中で、M. californicum HAZ160_1株と近縁なのはM. bovigenitaliumおよびM. fermentansであり、同様にM. canadense HAZ360_1株と近縁なのはM. alkalescensおよびM. argininiである。近縁菌種それぞれの菌株間では90%以上のCDSが互いに最も高い相同性を示す。一方、両菌株のCDSは、牛に重篤な臨床症状を惹起する牛肺疫マイコプラズマ(M. mycoides subsp. mycoides SC株)や牛に多様な病態を惹起するM. bovisのCDSに対しての相同性が低い。
  4. 牛肺疫マイコプラズマやM. bovisの主要な病原遺伝子と考えられる1莢膜合成酵素遺伝子群、2活性酸素産生酵素遺伝子群、3可変表面抗原遺伝子群について、M. californicum HAZ160_1株では2を、M. canadense HAZ360_1株では1と2をそれぞれ欠いている(図1)。M. californicumM. canadenseが牛肺疫マイコプラズマやM. bovisより病原性が低いのは、これら病原遺伝子群の欠損によるものと推測される(表1、図1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究で解明されたゲノム情報はDDBJ/EMBL/GenBank のデータベースに登録および公開済であり(accession nos.:AP013353 [M. californicum HAZ160_1株]、AP014631 [M.canadense HAZ360_1株])、世界中で本情報の活用が可能である。
  2. 本研究で世界に先がけ解明されたゲノム情報は、新たな病原因子の特定や機能解析、PCR等を用いた簡易迅速診断法や遺伝子型別法の開発につながる。また、これら知見や技術を用いることにより、乳房炎をはじめ本菌が原因となる牛疾病の実態解明研究の進展や予防法の確立が期待できる。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027951
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