新品種の開発・普及からみた日独小麦収量格差の形成要因

タイトル 新品種の開発・普及からみた日独小麦収量格差の形成要因
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究課題名
研究期間 2011~2014
研究担当者 関根久子
発行年度 2014
要約 ドイツでは小麦出荷の際、品質グループでの取引が行われているため、生産者は圃場条件等に適合する複数品種を作付けするなど、新品種の導入が容易な条件にある。その結果、日本に比べ品種交替が速く、収量性のより高い品種が早期に普及している。
キーワード 小麦、収量性、品種開発、新品種普及、品質取引
背景・ねらい 1960年代以降の年平均小麦収量増加率をみると、日本が0.91%となっているのに対して、ドイツが1.76%と日本に比べて高い(FAOSTATにより算出)。その結果、日本の小麦収量は、ドイツの749kg/10aに比較し350kg/10aと少なく(2009から13年の5ヶ年平均)、収量向上が急務となっている。作物の収量性には品種開発・普及の動向が大きな影響を与えることから、日本とドイツの小麦品種の登録・普及、生産者の品種選択行動に与える取引の比較を通して、新品種開発・普及の観点からみた日本の小麦低収の要因を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 小麦は、日本では特定の品種が長期間作付けされているのに対して、ドイツでは、毎年多数の品種が作付けされ、また品種交替のテンポも速い(図1)。
  2. 2003から10年までの小麦の品種登録数は、日本の36に対してドイツでは約3倍の117品種と多い。しかし、生産量は日本の86万tに対して、ドイツは26倍の2,243万t(2012年)であり、これを考慮すると日本の品種登録数は必ずしも少なくない。一方、品種の普及については、日本では2009年に登録された「きたほなみ」を除き、検査数量からみた普及率は限られている。これに対し、ドイツでは登録品種のうち毎年数品種は早期に10から20%の割合で作付けされ、また、5年程度で次の登録品種に更新されている(図2)。
  3. 2003から12年におけるドイツの作付け上位5品種は合計17品種ある。このうち継続して作付けのあった一品種(Cubus)を基準に年次変動を控除し、上位5品種の平均収量指数の推移をみると約7%増加している(図3)。このことから新品種の普及が収量向上に寄与していると考えられる。
  4. 小麦生産者の品種選択については、日本では産地品種銘柄ごとに取引がなされ、それ以外の品種、あるいは品種混合はランク低下となることから、特定の品種が作付けされやすい。一方、ドイツでは品質グループでの取引であり、複数品種の混合は収入低下につながらない。そのため、圃場条件や輪作体系に適合する品種を複数作付け・出荷するという対応がなされている(表1)。このこともドイツにおける新品種の早期導入の要因となっている。
成果の活用面・留意点
  1. ドイツでは、小麦の品種開発が民間企業で行われていることや、製粉業に関わる産業構造など、日本とは異なる制度や市場評価の仕組みが存在する。ここでは、新品種の普及動向と生産者の品種選択行動に着目して整理を行っている。
  2. 収量性の評価においては、ドイツでは食用504万tに対して飼料用742万tと飼料用の需要も多いこと(2008/09年)、また、食用と飼料用に同じ小麦品種を用いる場合があるのに対して、日本の品種は食用のみに用いられる点にも留意が必要である。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027787
カテゴリ 小麦 収量向上 出荷調整 飼料用作物 新品種 品種 品種開発 輪作体系

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