タイトル |
天敵として有用なカブリダニ類の種を識別するマニュアル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究課題名 |
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研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
後藤千枝
豊島真吾
岸本英成
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発行年度 |
2014 |
要約 |
カブリダニ類の体色、胴背毛、周気管、腹肛板、受精嚢を検鏡し、カブリダニ識別マニュアルの顕微鏡画像と比較すると、農業に有用なカブリダニ類の土着16種と導入3種を識別できる。
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キーワード |
天敵、カブリダニ、識別、土着種、導入種
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背景・ねらい |
近年、果樹、茶、露地野菜では土着天敵の活用に関心が寄せられ、施設野菜などでは生物農薬の利用が急速に普及している。そのような天敵類を活用する防除体系では、圃場や施設に生息する害虫種の識別に加え、天敵類の把握が不可欠である。天敵類の中でもカブリダニ類は農業に有用な土着種が多く、カブリダニ類の種の識別は普及現場における必須技術となりつつある。ところが、既存の検索表には難解な表現が多く、形態形質を参照できる描画も少ないなど、カブリダニ類の識別はベテランの研究員にとっても困難な技術である。また、既存の検索表には、カブリダニ製剤(導入種)を識別する情報がない。そこで、主要な種を絞りこみ、識別に必要な形質を抽出することにより、農業に有用なカブリダニ類の種を簡便に識別する技術を開発し、識別マニュアルを作成する。
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成果の内容・特徴 |
- 土着カブリダニ95種のうち、農地でよく採集され、微小害虫の密度抑制効果が期待される土着16種に、カブリダニ製剤として輸入されている導入3種(チリカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、ククメリスカブリダニ)を加えた19種を識別の対象とする。
- 識別する種を絞り込むと、識別に利用する形質を既存の検索表の34形質から13形質に絞り込める。具体的には、胴背毛(特に、j3、z2、z3、z4、s4、s6、J2、R1、Z4、Z5:ローマ字と数字の組み合わせで特定の胴背毛を示す)、周気管、腹肛板、受精嚢を観察して識別する(図1)。その他の形質の名称や位置については、マニュアル表紙の描画でも確認できる(図2)。チリカブリダニのみ体色で識別する(図3)。
- まず、体色でチリカブリダニとその他のカブリダニ類を識別した後、プレパラート標本を作製して胴背毛の一部(側列毛:j3、z2、z3、z4、s4、s6)を計数し、最短では1ステップで、最長でも8ステップで識別できる(図3)。
- マニュアルにはそれぞれの種で複数の形質の顕微鏡画像を掲載しているので、識別が正しいか確認できる。マニュアルの顕微鏡画像と異なる場合には、絞り込んだ19種以外と判定する(必要であれば専門家へ同定を依頼する)。
- 土着種と導入種(カブリダニ製剤、図3の赤字)を一体的に識別できるので、土着種と導入種を区別して計数し、野菜栽培施設におけるカブリダニ製剤の定着状況や防除効果を的確に評価できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:都道府県研究機関、普及指導機関、大学。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:環境保全型農業を推進する果樹、茶の生産地域。カブリダニ製剤を利用する施設野菜および露地野菜の栽培地域。
- その他:本技術をまとめたマニュアルは、農研機構のサイト(下記「発表論文等」参照)からダウンロードできる。なお、カブリダニの標本作製には実体顕微鏡、種の識別には位相差(もしくは微分干渉)顕微鏡が必要である。
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カテゴリ |
害虫
茶
土着天敵
農薬
微小害虫
防除
野菜栽培
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