林木遺伝資源の収集・保存手法の開発

タイトル 林木遺伝資源の収集・保存手法の開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 宮本 尚子
那須 仁弥
大谷 雅人
木村  恵
山田 浩雄
生方 正俊
発行年度 2015
要約 林木ジーンバンク事業の対象となる樹種リストを作成し、成体保存されている遺伝資源を整理するとともに、GIS技術により地図上に「見える化」することで、今後、成体保存の必要性の高い地域を明らかにしました。
背景・ねらい 有用で貴重な林木遺伝資源を効果的かつ効率的に収集・保存するにあたって、その利便性を向上させるためには、現在までの収集・保存状況を評価し、それらを「見える化」させておくことが大切です。そこで、林木ジーンバンク事業の対象となる樹種リストを作成し、成体保存されているものについて、現在の収集・保存状況の整理を行いました。また、樹木の生育に関係が深い気温や降水量などの気候条件を用いて、成体保存されている遺伝資源と対象種の生育範囲との比較を行い、成体保存の少ない地域や気候条件をGIS 技術により地図上で可視化し、今後、収集・保存に重点を置く必要のある地域を明らかにしました。今回の評価結果は、林木遺伝資源の収集・保存計画の策定に活用されます。

GIS
地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工して、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にするシステム。
成果の内容・特徴 林木ジーンバンク事業について
林木のジーンバンク事業は、1985 年から「育種素材の供給源の確保」、「絶滅に瀕している種の確保」等を目的に、森林総合研究所が主体となって遺伝資源としての林木を収集・保存する事業で、種子や花粉による保存のほか、2015 年度末現在で約2 万6 千系統の樹木そのものを増殖して保存園などで保存(成体保存)しています。将来にわたって有用で貴重な林木遺伝資源を保存・継承し、新品種の開発や科学技術の発展に寄与する研究材料としての利用に備えるためには、林木遺伝資源の対象となるそれぞれの樹種が、戦略的に収集・保存されていることが求められます。このため、現在までに成体保存されている遺伝資源について、種の分布域に照らし合わせた評価を行いました。

収集・保存状況の評価
まず、林木ジーンバンク事業の対象となる日本産樹木について、異名同種等の整理を行い、1,574 樹種のリストを作成しました。このリストと現在までに成体保存されている遺伝資源とを照らし合わせた結果、349 樹種が収集・保存されていることがわかりました。このうち、100 系統以上のまとまった数が保存されている遺伝資源は25 樹種でした。この中から、日本に広く分布し、主要な広葉樹であるブナとケヤキの事例を紹介します。
日本におけるブナとケヤキの分布域は、環境省が実施した日本全国の植生調査データと巨樹巨木データから、ブナとケヤキを抽出して作成しました(図1)。この分布域と成体保存されている系統の収集地点とを重ね合わせた結果、ケヤキは分布域を網羅するように収集・保存されているのに対し、ブナは北海道・東北に偏っていることがわかりました。また、気象庁が作成したメッシュ気候値を用いて、年平均気温と年間降水量のデータを抽出し、分布域の気候条件と収集・保存地点の気候条件を重ね合わせました(図2)。その結果、ケヤキは分布域の気候条件を網羅するように収集・保存されていますが、ブナは分布域の気候条件の中では、気温が高く降水量が少ない地域に偏っていることがわかりました。今後のブナの収集・保存にあたっては、南東北から長野県・岐阜県の北部にかけての地域(図1)や分布域の中の気温の低い地域や降水量の多い地域(図2)、さらには温暖化の影響により消滅が危惧されている西南日本の小集団(図1)からも行うことで、ブナの遺伝資源を幅広く保存できることが明らかとなりました。
今回の評価結果は、林木遺伝資源の効果的で効率的な収集・保存計画の策定に活用できるだけでなく、一般に広く公開することで、遺伝資源の利用者が試験研究に用いる遺伝資源の来歴を地図上で具体的にイメージできるようになり、利便性の向上にも寄与するものと考えています。

メッシュ気候値
日本全国を約 1km 四方のメッシュに分割し、各メッシュ内の気候値(月平均気温や月降水量、日照時間など)を推定した数値データ。

URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027763
カテゴリ 育種 遺伝資源 加工 新品種

この記事は