隠れた伐採も見逃さない ―宇宙から森林劣化を監視する―

タイトル 隠れた伐採も見逃さない ―宇宙から森林劣化を監視する―
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 鷹尾  元
古家 直行
平田 泰雅
発行年度 2015
要約 これまで検出が困難だった「森林劣化」を高分解能衛星画像により広域で系統的かつ自動的に抽出する技術を開発しました。森林劣化の傾向と原因をこの技術で究明し、森林の持続的利用の回復に貢献します。
背景・ねらい 森林内の一部の樹木が無秩序に伐採されるなどして森林炭素蓄積が低下する「森林劣化」は、森林の持続的利用を妨げる大きな問題ですが、それを広域で把握することはこれまで困難でした。私たちは、時期を変えて撮影した2 枚の高分解能衛星画像を比較して、その間に森林内で消失した樹木の樹冠を広域で系統的かつ自動的に抽出する技術を開発しました。この技術を用いてカンボジアの熱帯季節林で検証を行い、一本一本の樹木の消失を抽出することにより、対象地全域で森林劣化が急速に進行していることを明らかにしました。この技術により森林劣化の傾向と原因を究明し、REDD プラス活動を促進して森林の持続的利用の回復に貢献します。

REDD プラス
「REDD」はReducing Emission from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries (途上国における森林減少・劣化からの排出の削減) の略称。さらに、森林保全・持続可能な森林経営・炭素吸収の強化を加えて「REDD プラス」と呼ばれる。
成果の内容・特徴 木が無秩序に伐られて森林が劣化する
「森林劣化」とは、森林内の一部の樹木が無秩序に伐採されるなどして、森林としての姿は残しつつも森林炭素蓄積が低下することを指します。森林資源を持続的に利用し続け、かつ生物多様性の保全など森林の他の機能も維持するためには、科学的に妥当な森林管理計画を関係者の合意のもとに立てて実施する必要があります。しかし、発展途上国には、関係者の合意の無いまま無秩序に、時には違法に伐採が行われ、劣化の進んでいる森林が多くあります。森林の持続的利用を回復するためには、このような森林劣化の現状を正しく把握する必要があります。

宇宙から劣化を監視する

森林が消えてしまう「森林減少」とは異なり、森林劣化はなかなか見つけられません。伐られた木のそばまで行かなければ変化がわからないからです( 図1)。そこで私たちは、宇宙から一本一本の木の樹冠を見分けることができる高分解能衛星画像を用いて、森林内で消失した樹冠を広域で系統的かつ自動的に抽出する技術を開発しました。
この技術では、テンプレートマッチングという手法を用い、画像上を隈なく走査して樹冠を大きさ別に検出します( 図2)。ひとつの森林を異なる時期に撮影した2 枚の画像にこの処理を行い、検出結果を比較して古い画像にあった樹冠が新しい画像からなくなった場合には、その樹木は消失したと判定します。
カンボジアの熱帯季節林において、空間分解能が2.5mの人工衛星だいち(ALOS) のPRISM 画像を用いて森林劣化の検出を行い、現地の実測データで検証したところ、約76%の検出率で林冠の上層に達した大きな樹木の消失を判定できることが分かりました( 図3)。検出されなかった伐採木の多くは、林冠上部には達していない小さな木で、森林炭素蓄積の変化にはあまり影響のないものでした。木のサイズごとの検出誤差を推定し、その結果を考慮して、研究対象地全域の森林炭素蓄積の減少量を推定したところ、森林面積自体は変化していないにもかかわらず、炭素蓄積の減少が急速に進行していることが明らかになりました。

地域の生活と地球の環境のために
この技術により、地域住民以外には近寄れない奥深くの森林で起きた伐採とそれによる森林劣化を定量的に把握できるようになりました( 図4)。この情報は、森林劣化の傾向と原因を究明し、さらなる劣化を未然に防ぐ対策を立てるのに利用できます。そして、REDD プラスと呼ばれる地球温暖化の緩和のために発展途上国の森林を守る活動などを促進して、森林の持続的利用の回復と地域住民の生活向上に貢献します。
本研究は、農林水産技術会議委託プロジェクト「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のためのプロジェクト」D-1 系「高精度リモートセンシングによるアジア地域熱帯林計測技術の高度化」( 平成23 ~ 26 年度)による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027752
カテゴリ 経営管理 リモートセンシング

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