どのように伐れば収益が上がるのか-シミュレーションで探る最適な施業-

タイトル どのように伐れば収益が上がるのか-シミュレーションで探る最適な施業-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究課題名
研究期間
研究担当者 北原 文章
酒井 寿夫
宮本 和樹
佐藤 重穂
田中 良明
吉田 智佳史
中澤 昌彦
光田  靖
発行年度 2015
要約 人工林から得られる収益は、成長量(材価)や保育・伐採・搬出費によって決まります。開発したシステムではこの収益計算だけではなく、現在の人工林から将来高い収益を得るための施業方法を探索することができます。
背景・ねらい 戦後植栽されたスギやヒノキの人工林の多くは林齢40 年から50 年となり、収穫可能な時期を迎えています。しかし、これらの林をどのように間伐し、いつ主伐を行えばよいのかという施業方法は、立地条件や林分の状態、伐出方法によって異なります。そこで、本研究ではさまざまな条件のもとで、人工林をどのように施業すれば少しでも多くの収益を上げられるか探索するシステムを開発しました。50 年生のスギ林を対象に、今後100 年間の最適な施業方法を探索した結果、現状の木材価格で更新費用を考慮した場合、60 年から90 年で皆伐を行う施業が欧州型の非皆伐施業や50 年で皆伐を繰り返す短伐期施業と比べて収益面で有利であることが示されました。
成果の内容・特徴 施業シミュレーションシステムの開発とその意義
戦後植栽された人工林の多くが、50 年生前後となり伐期を迎えています。しかし、木材価格の低迷やコスト高のために、伐採を先延ばしにするなど、林業経営を将来的に見通すことが課題となっています。そこで、さまざまな森林施業の組み合わせを想定して、最大の林業収益が得られる施業方法をみつけだすための施業シミュレーションシステムを開発しました。このシステムは、以下のような2 つのモデルから構成されています(図1)。

(1)林分成長モデル
林分全体の成長量を気象条件、土地条件(地位)、林分構造に基づいて推定します。次に、林分全体の成長量を個体間競争の優劣に応じて分配して、個体成長量を推定します。この成長モデルで推定される間伐前後の成長経過は、現実林分のデータによってその再現性が確認できました。

(2)伐出コストモデル
日本で導入されている高性能林業機械(35 機種)のほか、高知県香美森林組合に導入された欧州型タワーヤーダによる伐出作業のコストを算定することができます。立地や林分の条件に応じて機械の生産性が変化することが大きな特徴です。

最適な施業方法探索の事例
日本で行われてきた皆伐施業とドイツ・オーストリアで行われている非皆伐(将来木)施業について、同じ50年生林分を初期値として100 年後までに実施される施業シナリオを仮定して、それぞれの期待される収益を比較しました(図2、表1)。50 年という比較的短い伐期で3回の皆伐・更新を行う場合を除いて、60 年から90 年伐期の組み合わせで2 回の皆伐・更新を行う皆伐施業が、非皆伐施業よりも有利という結果になりました。このことから、今ある人工林に対する施業としては、皆伐施業が非皆伐施業よりも有利であり、伐期はこれまでよりもやや長くすることでより収益を得られることが示唆されました。

残された課題
収益面で比較すると、非皆伐施業よりも皆伐施業が有利という結果となりましたが、皆伐による林地保全への影響など、山づくりの視点からの検討も必要です。今後、施業の違いによる下層植生や土壌、山地防災との関係を含めて検討していく必要があります。また、今回は林分レベルでの比較を行いましたが、施業の違いを団地レベルで考えた場合はどうなるのかという課題も残されています。

本研究は、独立行政法人森林総合研究所交付金プロジェクト「豪雨・急傾斜地帯における低撹乱型人工林管理技術の開発」による成果です。
URL http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/3010027738
カテゴリ 管理技術 経営管理 傾斜地 コスト

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